医療関連感染の新興起因菌としてのクロノバクター(Cronobacter)属菌★

2014.03.31

Cronobacter spp. as emerging causes of healthcare-associated infection


O. Holý*, S. Forsythe
*Palacký University Olomouc, Czech Republic
Journal of Hospital Infection (2014) 86, 169-177
背景
近年まで、院内感染の起炎菌としてのクロノバクター(Cronobacter)属(旧名エンテロバクター・サカザキイ[Enterobacter sakazakii])の菌群の位置づけはよくわかっていなかった。しかし、Cronobacter 属菌と乳児の感染との関連、特に新生児集中治療室における汚染された乳児用調製粉乳の授乳による感染は、新生児医療の改善のための国際的な取り組みをもたらした。
目的
この新興の病原性細菌群に関する現在の知見、および新生児の感染症の減少のために実施されている手順について調査すること。
方法
Cronobacter属の最近の分類学上の変更、感染源、および臨床的重要性に関する現在の知見を明らかにするため、文献レビューを行った。
結果
新生児の重度の髄膜炎感染症のほとんどは、Cronobacter 属菌 10 種のうちの 1 種である C. sakazakii のシークエンス型 4(ST4)として知られているクローン複合体と関連していた。本菌による新生児の感染症リスクを低下させるための国際連合食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の国際的な取り組みによって、乳児用調製粉乳の微生物学的安全性は改善したが、授乳に関する改訂版ガイドラインには依然として問題がある。また、感染症の多くは成人集団で発生しており、その感染源は不明である。
結論
乳児用調製粉乳の微生物学的安全性の国際的な改善および授乳に関する提言は、新生児領域における Cronobacter 感染症を周知させることと、新生児医療の改善を重視している。これにより、その他の日和見病原性細菌への新生児の曝露も減少するだろう。しかし WHO の提言を遵守したとしても、早産児への安全な授乳方法に関しては多くの未解決の問題が残されている。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
Cronobacter sakazakii は、腸内細菌の研究に多大な貢献をした坂崎利一氏の名前を冠した腸内細菌群の一菌種である。従来 Enterobacter sakazakii と同定されていた菌群は、2008 年に8種の Cronobacter 属菌に細分化された。本菌による粉ミルクの汚染とそれに続発する新生児の髄膜炎が多発したため、2004 年に WHO はその改善について提言を行ったが、「70℃のお湯で溶かす」などの温度管理は実際には難しいといった問題がある。また本菌による感染症は成人例が多く、その感染経路などはよくわかっていない。日本での本菌による新生児髄膜炎はまれであるが、今後も注意が必要である。

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