メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)に対する抗菌薬による除菌療法の実施時期の改善:記述的説明
Improving the timeliness of meticillin-resistant Staphylococcus aureus antimicrobial decolonization therapy administration: a descriptive account
H.L. Brooks*, J. Hodson, S.J. Richardson, L. Stezhka, M.J. Gill, J.J. Coleman
*University Hospitals Birmingham NHS Foundation Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2014) 86, 209-215
背景
患者にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌が確認された場合は、抗菌薬による適切な除菌療法を適時に実施することが重要である。Clinical Decision Support(CDS)を組み入れた Computerized Provider Order Entry(CPOE)が、その改善に寄与する可能性がある。
目的
患者の入院から MRSA 除菌のための抗菌薬療法を実施するまでの平均期間の変化を、CPOE の利用を含む、国および当院の種々の感染制御介入との関連と併せて評価すること。
方法
Prescribing Investigation and Communications System(PICS)は、1998 年に英国の大規模大学教育病院で初めて導入された CPOE システムである。当院で開発した PICS から、入院時期と MRSA 除菌のための初回抗菌薬投与の実施時期に関するデータを抽出した。2006 年 1 月から 2012 年 3 月のデータを後向きに抽出した。
結果
2006 年から 2012 年には当院および国による様々な重要な介入が実施された。特に 2007 年 12 月には、MRSA 除菌のための抗菌薬療法の自動処方システムが導入された。入院から MRSA 除菌のための抗菌薬療法が実施されるまでに要する期間には、研究期間中に 1 年あたり 15.0%の有意な減少が認められた(95%信頼区間 11.1% ~ 18.7%、P < 0.001)。
結論
入院から MRSA 除菌のための抗菌薬療法実施までの期間の短縮に対しては、CPOE システムにおける特定の項目を実施したことなどを含む、多くの因子が寄与していたと考えられる。MRSA 保菌陽性への迅速な対処によって MRSA 拡散の可能性が低下し、それにより病院内の MRSA 保菌率の減少と患者アウトカムの改善がもたらされると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
MRSA の慢性保菌者に対する除菌療法が、本当に恒常的な除菌が効果的な割合で可能なのかどうかについても議論する必要があろう(一過性の菌量減少には貢献するだろうが)。また除菌に使用する抗菌薬の耐性化の問題も課題である。
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