開放式末梢静脈カテーテルと安全な閉鎖式末梢静脈カテーテルの留置時間、合併症、およびコストの比較:ランダム化試験★
Indwell times, complications and costs of open vs closed safety peripheral intravenous catheters: a randomized study
J.L. González López*, A. Arribi Vilela, E. Fernández del Palacio, J. Olivares Corral, C. Benedicto Martí, P. Herrera Portal
*Hospital Clínico ‘San Carlos’, Spain
Journal of Hospital Infection (2014) 86, 117-126
背景
末梢静脈カテーテル(PIVC)によるカテーテル関連感染症は、増加中の医原性合併症である。これを予防するために推奨されている PIVC の定期的な交換時間は、その裏づけとなる科学的エビデンスが欠如しているにもかかわらず、48 時間から 72 時間へ、さらに 96 時間へ延長されてきた。
目的
閉鎖式 PIVC と開放式 PIVC を比較すること。
方法
今回の前向きランダム化対照試験では、合併症が発生するまでの PIVC の留置時間を、閉鎖式 PIVC と開放式 PIVC で比較した。PIVC の抜去は、臨床的適応が認められた場合のみ実施した。合計で、PIVC 1,199 件(入院患者 642 例)をランダム化の対象とし、283 件で培養を行った。ランダム化後に 16 件のカテーテル(11 例)が追跡不能となった。
結果
合計で、104,469 カテーテル時間(閉鎖式 584 件、54,173 カテーテル時間、開放式 599 件、50,296 カテーテル時間)の記録を行った。留置時間中央値は、閉鎖式 PIVC 137.1 時間、開放式 PIVC 96 時間であった(P = 0.001)。24 時間以上留置した PIVC の留置時間中央値は、閉鎖式 PIVC 144.5 時間(95%信頼区間[CI]123.4 ~ 165.6 時間)、開放式 PIVC 99 時間(95%CI 87.2 ~ 110.8 時間)であった。閉鎖式 PIVC の使用によって静脈炎の発生率は 29%減少した(1,000 カテーテル日あたり 31 件対 45 件、P = 0.004)。開放式 PIVC の 96 時間留置率は 79.9%、閉鎖式 PIVC の 144 時間留置率は 80.4%であった。1,000 カテーテル日あたりの細菌定着率(閉鎖式 51.1、開放式 54.1)、またはカテーテル関連感染発生率(閉鎖式 5.76、開放式 6.65)に有意差はみられなかった。それにもかかわらず、カテーテル関連感染の相対リスクは 20%低下した。
結論
閉鎖式 PIVC を使用することによって、1 日あたりわずか 0.09 ユーロのコストで静脈炎エピソードが減少し、感染リスクが低下した。PIVC を臨床的適応に基づいて交換する場合は、リスクの増加なしに閉鎖式 PIVC は 144 時間まで、開放式 PIVC は 96 時間まで留置することが可能であり、コストは大幅に低下した(1,000 床年あたり 786,257 ユーロ)。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
スペインでは入院患者の約半数において血管内留置カテーテルが挿入され、その 95%が末梢静脈カテーテルと報告されている。そのような背景での末梢静脈留置カテーテルの開放式(三方活栓型)と閉鎖式の挿入時間と合併症について検討した論文である。閉鎖式により留置期間の延長と静脈炎発生の低減、さらにコストダウンができたことから、閉鎖式の優位性に加え、定期的交換よりも臨床状況に応じた交換がよいとの立場をとっている。
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