新卒看護師の感染制御に関する必須コンピテンシー(資質・適性)を明らかにする:オーストラリアおよび台湾における 3 期にわたる研究★★
Identifying essential infection control competencies for newly graduated nurses: a three-phase study in Australia and Taiwan
L.-M. Liu*, J. Curtis, P.A. Crookes
*Chang Gung University of Science and Technology, Taiwan
Journal of Hospital Infection (2014) 86, 100-109
背景
医療関連感染および病院感染により患者の罹患率と死亡率が上昇し、医療費が増加する。感染予防・制御は、医療現場の医療従事者の最優先事項である。
目的
新卒看護師の感染予防・制御に関する必須コンピテンシーについて明らかにすること。
方法
以下の 3 期にわたる研究をデザインした。第 1 期:調査ツールの作成(2008 年 1 月から 5 月に実施)、第 2 期:感染制御関連組織および看護学校(オーストラリア 60 組織、台湾 62 組織)のそれぞれの長が指名した専門家 122 名からなる専門家パネルの設立、および第 3 期:デルファイ法による調査(オーストラリアと台湾で 2008 年 7 月から 2009 年 5 月に同時に 3 回実施)。
結果
専門家 93 名が 1 回目の質問票に回答した。回答率は、1 回目 76.2%、2 回目 91.4%、および 3 回目 94.1%であった。3 回すべてに回答した専門家は 80 名であった。全体で 81 項目で合意に到達し、その内訳は、基礎微生物学に関するコンピテンシー領域 7 項目、手指衛生 12 項目、標準予防策および付加的予防策 30 項目、個人防護具 12 項目、洗浄、消毒、および滅菌 9 項目、および主要なアセスメントスキル 11 項目であった。専門家の大半(49 名、75.4%)は、新卒看護師の感染制御に関するコンピテンシーレベルは不十分であることに同意した。
結論
台湾とオーストラリアの専門家パネリストの合意によって、新卒看護師に特化した感染予防・制御に関するコンピ―テンシー調査のための 81 項目を作成した。本研究で得られたベースラインデータは、看護師による感染制御の原則の臨床への適用を促進するための看護学生用カリキュラムの開発に有用であると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
感染管理に関する卒前教育の必要性は声高に叫ばれている一方で、その具体的なカリキュラムについては明らかになっていない。本研究はオーストラリアと台湾の専門家にアンケート形式で「何が必要と考えられるか」を問い、81 項目の合意項目が得られたことを報告している。
日本でも卒前教育に感染管理を盛り込む動きがあり、本論文に紹介されている様々な項目・事項はカリキュラムの作成に役に立つことであろう。願わくば日本でも同様の研究が行われるべきである。
同カテゴリの記事
Emergence, transmission and phylogeny of meticillin-resistant Staphylococcus aureus sequence type 8 (USA300) in Taiwan
Molecular epidemiology study of a nosocomial Moraxella catarrhalis outbreak in a neurological rehabilitation unit
Benchmarking of urinary tract infection rates: experiences from the intensive care unit component of the German national nosocomial infections surveillance system
When the user is not the chooser: learning from stakeholder involvement in technology adoption decisions in infection control
Study of the environmental effect of a commercial wound cleanser used with different mechanical forces