アウトブレイク時の麻疹伝播のリスク因子:マッチング症例対照研究

2014.02.28

Risk factors for transmission of measles during an outbreak: matched case-control study


D. Hungerford*, P. Cleary, S. Ghebrehewet, A. Keenan, R. Vivancos
*Field Epidemiology Services North West, Public Health England, UK
Journal of Hospital Infection (2014) 86, 138-143
背景
2012 年、英国・マージーサイドで麻疹のアウトブレイクが発生し、6 月 30 日までに 359 症例が確認された。多くの症例が医療施設や市中を訪れたと回答した。
目的
アウトブレイク時の麻疹伝播に関連するリスク因子を特定すること。
方法
後向きマッチング症例対照研究を 2012 年 4 月に実施した。年齢および居住地で 1:1 にマッチさせた確定症例 55 例と住民対照 55 例をランダムに選択した。医療施設受診など、発症前 2 週間の曝露データを電話面接により収集した。単変量解析および多変量解析を実施し、オッズ比を算出した。
結果
症例 42 例およびマッチさせた対照 42 例の面接を行うことができた。単変量条件付きロジスティック回帰分析から、症例は救急部受診、入院、および年齢相応のワクチン接種未完遂の割合が高いことが示された。多変量解析からは、以下の 3 因子が独立して麻疹感染と関連していることが確認された。年齢相応のワクチン接種未完遂(補正オッズ比[aOR]22.1、95%信頼区間[CI]3.8 ~ ∞、P < 0.001)、定期ワクチン接種の年齢未満(aOR 20.4、95%CI 2.0 ~ ∞、P = 0.009)、および入院(aOR 20.2、95%CI 1.4 ~ ∞、P = 0.025)。
結論
ワクチン接種未完遂、定期ワクチン接種の年齢未満、および入院が麻疹感染と関連していた。これらの結果は、予防接種の対象者に対する適切な時期でのワクチン接種、早期診断、症例の適時の隔離、および厳格な感染制御対策実施が重要であることを示している。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
麻疹は発疹のでる 1 ~ 4 日前から感染性がある。そのため、発症に気づいてからの感染対策では、感受性者への感染を防ぐことはできない。また、感染力が極めて強く、麻疹の免疫がない集団に 1 人の発症者がでると、12 ~ 14 人が感染するとされている(インフルエンザでは 1 ~ 2 人)。確実な予防策はワクチン接種であり、接種率の目標は 95%以上とされている。麻疹排除の国際基準は人口 100 万人あたりの発症者が 1 人未満(輸入例除く)であるが、日本は目標接種率も、麻疹排除基準も、まだ到達できていない。

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