3種類の手術時手洗い用製剤の in vivo での細菌数減少効果の比較★

2014.01.30

In vivo comparative efficacy of three surgical hand preparation agents in reducing bacterial count


P. Barbadoro*, E. Martini, S. Savini, A. Marigliano, E. Ponzio, E. Prospero, M.M. D’Errico
*Hospital Hygiene Service, Ospedali Riuniti, Ancona, Italy
Journal of Hospital Infection (2014) 86, 64-67
背景
手術時手洗い法として消毒薬含有液体石けんと擦式アルコール製剤のどちらを選択するかについては、客観的な効果を除くと個人の好みに基づいている。忍容性を改善するために製剤にグリセロールが添加されることが多いが、グリセロールは手術用擦式製剤の持続的効果を低下させる要因の 1 つであることが最近報告された。
目的
3 種類の市販の手指汚染除去製剤の効果を比較すること。
方法
擦式アルコール製剤(イソプロピルアルコール 40%、n-プロピルアルコール 25%、グリセリン 1.74%、カルボマーのトリエタノールアミン塩 < 1%)の in vivo での効果を、他の広く使用されている手術用手指消毒薬(クロルヘキシジンおよびポビドンヨード)と比較した。いずれの製品も製造会社の添付文書に従って使用した。
結果
擦式アルコール製剤の成績が最も良好であり、効果は 3 時間にわたって持続した。擦式アルコール製剤の使用時に一部の被験者に手指の皮膚剥離が生じ、この参加者群では細菌数の減少は 0.91 ± 1.67 log10 のみであったのに対して、皮膚剥離がみられなかった参加者群では 2.86 ± 1.22 log10 であった。
結論
これらの結果から、手術時の手指汚染除去のための擦式アルコール製剤の重要性が確認されたことに加えて、医療従事者の皮膚の特性や反応を評価することの意義が示唆された。そして、そのことが、擦式アルコール製剤による手術時の手洗い後の原因不明の保菌数増加が、皮膚剥離の発現によりもたらされている可能性を示唆している。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
EU 諸国では、手術時手指消毒には液体性の手指消毒剤と擦式アルコール製剤の両者が利用されている。本論文では、擦式アルコール製剤の持続消毒効果が確認された。擦式アルコール製剤には様々な添加剤が配合され、消毒剤の即効性を増強させている。一方で、消毒剤に添加されているグリセロールは持続効果を減弱させることが報告されている。また、擦式アルコール製剤は、時に細かな塊ができ、砂のようなザラザラ感として認識され、皮膚剥離を起こすことがあり、逆に菌数を増やすことがある。アルコール製剤の選択において、個人差があることも考慮する必要がある。

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