人工関節感染症の治療コストに影響を及ぼす因子

2013.11.30

Factors influencing the cost of prosthetic joint infection treatment


T.N. Peel*, A.C. Cheng, Y.P. Lorenzo, D.C.M. Kong, K.L. Buising, P.F.M. Choong
*University of Melbourne, Australia
Journal of Hospital Infection (2013) 85, 213-219
背景
人工関節感染症は医療施設に甚大なコストをもたらす。既報では、人工関節感染症に対する特定の治療法のコストの評価は実施しているが、他のコスト推進要因の評価は行っていない。
目的
人工関節感染症の全治療コストを評価すること、および管理コストに関連する因子を特定すること。
方法
10 病院の患者 139 例を対象として、人工関節感染症の治療コストを 3 年間(2006 年 1 月から 2008 年 12 月)にわたって評価した。コスト計算の対象は、入院コスト、手術コスト、hospital-in-the-homeのコスト、および抗菌薬療法のコストとした。負の二項回帰分析を用いて、総コストに関連する因子をモデル化した。
結果
患者 1 例あたりの人工関節感染症の治療コスト中央値は 34,800 オーストラリアドル(四分位範囲 20,305 ~ 56,929)であった。治療コスト上昇の独立関連因子は、感染性再置換術(治療コストの 67%上昇、P = 0.02)、発症時の低血圧(70%上昇、P = 0.03)、複数菌感染(41%上昇、P = 0.009)、一期的関節置換術(100%上昇、P = 0.002)、および切除関節形成術(48%上昇、P = 0.001)であった。培養陰性の人工関節感染症は治療コスト低下(29%低下、P = 0.047)に関連していた。治療不成功は治療コストの上昇(156%)に関連していた。
結論
本研究により、治療コストに影響を及ぼす臨床的に重要な因子が特定された。これらの因子は政策立案者にとって、特に医療費償還の問題や、費用対効果に優れた予防戦略に関する今後の研究の運営との関連において重要であると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
人工関節感染症は患者本人にとっても病院にとってもありがたくない合併症である。経済的なエビデンスを明らかにすることにより、より積極的な感染予防の取り組みが進むことを期待したい。
監訳者注:
Hospital-in-the-home(HiTH):入院が必要と考えられる患者の急性期ケア(抗菌薬静脈投与など)を在宅で行う、オーストラリアの医療サービス制度の 1 つ。
詳細は HiTH に関する団体のホームページを参照されたい(http://health.vic.gov.au/hith/)。

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