バンコマイシン耐性は腸球菌細菌尿の患者アウトカムに影響しない
Vancomycin resistance has no influence on outcomes of enterococcal bacteriuria
H.N. Khair*, P. VanTassell, J.P. Henderson, D.K. Warren, J. Marschall, for the CDC Prevention Epicenters Program
*Washington University School of Medicine, USA
Journal of Hospital Infection (2013) 85, 183-188
背景
病院内でのバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染症の問題は拡大しつつある。腸球菌尿路感染症に対するバンコマイシン耐性の影響は明らかにされていない。
目的
病院内での腸球菌細菌尿の疫学について述べるとともに、臨床像および患者アウトカムをバンコマイシン耐性の有無別に比較すること。
方法
本研究は、1,250 床の 3 次病院に入院した腸球菌細菌尿患者、または入院中に腸球菌細菌尿を発症した患者を対象とした 6 か月間の前向きコホート研究である。その臨床症状、診断検査、管理、および患者アウトカムについて調査した。
結果
腸球菌細菌尿患者 254 例を対象とし、このうち 160 例(63%)が女性であり、年齢中央値は 65 歳(範囲 17 ~ 96 歳)であった。細菌尿の合計 116 件(46%)は病院感染、145 件(57%)はカテーテル関連であった。半数以上の患者は無症候性細菌尿(119 例、47%)または腎盂腎炎(64 例、25%)のいずれかであり、51 例(20%)は分類不能の細菌尿、20 例(8%)は膀胱炎であった。二次血流感染症が 8 例(3%)に認められた。無症候性細菌尿患者 119 例中 70 例(59%)は抗菌薬投与を受けた(ほとんどがバンコマイシン)。VRE 細菌尿は 74 例(29%)であった。VRE 細菌尿およびバンコマイシン感性腸球菌(VSE)細菌尿における腎盂腎炎(19 例[25%]対 45 例[25%]、P = 0.2)、膀胱炎、および無症候性細菌尿の割合は同等であった。ICU 転室(VRE 10 例[14%]対 VSE 17 例[9%]、P = 0.3)、入院期間(6.8 日対 5.0 日、P = 0.08)、および死亡(10 例[14%]対 13 例[7%]、P = 0.1)などの患者アウトカムには、バンコマイシン感性の有無による相違はなかった。
結論
腸球菌細菌尿の入院患者の本コホートでは、バンコマイシン耐性は臨床症状に影響せず、また患者アウトカムにも影響しなかった。本コホートのほぼ半数は、腸球菌による無症候性細菌尿であった。これらの無症候性患者の 50%以上が不要な抗菌薬投与を受けていた。抗菌薬管理の取り組みにおいては、腸球菌細菌尿に対する過剰な治療を標的とすべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
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