欧州の長期療養施設での感染予防・制御および抗菌薬管理に関する国レベルでの成績評価指標の開発と評価★
Development and assessment of national performance indicators for infection prevention and control and antimicrobial stewardship in European long-term care facilities
B. Cookson*, D. MacKenzie, G. Kafatos, B. Jans, K. Latour, M.L. Moro, E. Ricchizzi, M. Van de Mortel, C. Suetens, J. Fabry on behalf of the National Network Representatives for the Healthcare-Associated Infections in Long-Term Care Facilities (HALT) Project
*Health Protection Agency, UK
Journal of Hospital Infection (2013) 85, 45-53
背景
長期療養施設における医療関連感染の重要性が増加している。
目的
長期療養施設における感染制御および抗菌薬管理を対象とした、合意形成を得た国レベルでの成績評価指標を開発すること、およびこれらの指標を用いて欧州 32 か国の成績評価を実施すること。
方法
すでに確立している欧州の標準指標を雛形として、同一の反復アプローチ法※を用いて 32 か国の担当者による合意形成を行った。世界保健機関(WHO)のスコアリングシステムにより、各国が個別の標準指標をどの程度厳格に実施しているかを記録した。
結果
合意形成を得た 42の個別指標を、「全国的プログラム」、「ガイドライン」、「専門家の助言」、「感染制御のための施設構造(抗菌薬管理に関する成績指標は該当しない)」、「サーベイランス」、および「その他」の 6 カテゴリーに分類した。各カテゴリーのスコア平均値をスコア満点に対する百分率で表すと、「ガイドライン」(60%、範囲 20% ~ 100%)が最も高く、次いで「その他」(53%、範囲 30% ~ 100%)、「専門家の助言」(48%、範囲 20% ~ 100%)、「サーベイランス」(47%、範囲 20% ~ 100%)、「全国的プログラム」(42%、範囲 20% ~ 100%)、および「感染制御のための施設構造」(39%、範囲 20% ~ 100%)の順であった。いくつかのスコアは低値であったものの、すべての成績評価指標を実施していた国もあることから、この指標は実用可能であることが示唆される。ほとんどのカテゴリー間には極めて強い有意な関連が認められたことから、各国でこれらすべての指標が重要視されていると考えられる。「ガイドライン」と「感染制御のための施設構造」のカテゴリーには欧州内の各地域との有意な関連が認められた(P ≦ 0.05)。7 か国(22%)では認可/審査が行われておらず、9 か国(28%)の認可/審査には感染制御の評価が、7 か国(22%)の認可/審査には感染制御と抗菌薬管理の評価が含まれていた。多変量解析からは、全国的成績評価指標および感染制御に関する成績評価指標の「専門家の助言」のみが、感染制御と抗菌薬管理を評価項目とする認可/審査と関連していた。
結論
本試験で判明したギャップから、重大な患者の安全性の問題が存在する可能性が示される。この国レベルでの成績評価指標は、ベンチマーク指標として今後数年間のモニタリング向上に寄与するはずである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
耐性菌はいともたやすく国境をまたいでくる。そうした観点から、隣接する国のみならず世界規模で抗菌薬の適正使用に関する管理を真剣に考える必要がある。
監訳者注:
※反復アプローチ法:WHOがHARMONYプロジェクトで使用した手法(Cookson B, et al. J Hosp Infect 2009;72:202)。
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