メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)医療関連感染の減少のための選択的スクリーニング+除菌と全症例スクリーニング+除菌の比較
Targeted versus universal screening and decolonization to reduce healthcare-associated meticillin-resistant Staphylococcus aureus infection
S.R. Deeny*, B.S. Cooper, B. Cookson, S. Hopkins, J.V. Robotham
*Public Health England, UK
Journal of Hospital Infection (2013) 85, 33-44
背景
入院時のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の全症例スクリーニングを、特定の患者集団を標的としたスクリーニングと比較した場合の有益性や、退院時スクリーニングを追加した場合の影響については明らかではない。
目的
MRSA スクリーニングと除菌治療の併用が MRSA 感染率に及ぼす影響を定量的に評価すること。全症例スクリーニング方策と選択的スクリーニング方策を比較するとともに、退院時スクリーニングと除菌の併用を追加した場合の影響を評価すること。
方法
900 床の 3 次病院における 18 か月の患者個別データから得た、一般病棟と集中治療室(ICU)との間および病院と市中との間の患者の移動に関する情報を組み入れた、MRSA 伝播の確率論的個体ベースモデルを開発した。MRSA の全症例スクリーニング+除菌方策および選択的スクリーニング(ICU の患者、急性期高齢患者、または再入院患者が対象)+除菌方策の影響を、入院時と退院時の各条件下でシミュレーションした。
結果
入院時の全症例スクリーニングと除菌により、MRSA 感染は 10 年間で 77%(95%信頼区間[CI]76% ~ 78%)減少すると考えられた。急性期高齢患者部門または ICU 患者のみを対象としたスクリーニングによる減少率は、それぞれ 62%(95%CI 61% ~ 63%)、66%(95%CI 65% ~ 67%)であった。選択的スクリーニング方策によって、スクリーニング件数は最大 95%、除菌コース数は 96%減少した。入院時スクリーニングに退院時スクリーニングを追加しても影響はわずかであり、感染のさらなる減少は最大 7%であった。
結論
選択的スクリーニングでは、必要となるスクリーニングおよび除菌の件数が全症例スクリーニングと比較して大幅に減少したが、感染の減少率は 12%低下したのみであった。選択的スクリーニングと除菌の併用により耐性菌出現リスクが低下し、医療資源の利用が効率化すると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
MRSA の除菌が一過性のものなのかどうかについて長期フォローアップ研究を行うべきであろう。全症例スクリーニングは費用と手間がかさむが、より確実な対処法と考えられる。
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