感染制御のための迅速診断検査:迅速検査は検査室で行うべきか、診療の場で行うべきか?★

2013.09.30

Point-of-care tests for infection control: should rapid testing be in the laboratory or at the front line?


C. Moore*
*University Hospital of Wales, UK
Journal of Hospital Infection (2013) 85, 1-7
背景
迅速診断検査(point-of-care test;POCT)では、直ちに患者の診療を行うために迅速に検査結果が提供される。これらの検査法は簡易であると考えられることから、適切な訓練を受けていない者が実施したり結果を解釈をした場合にみられる実施者間のばらつきが明確に現れない。感染性疾患の診断用に開発が進められている POCT 用の体外診断薬は増加している。これらを使用する際の限界を理解することにより、感染制御を目的とした POCT の実施が可能になると考えられる。
目的
拡大が続く感染性疾患診断用 POCT 製品レパートリーのレビューを行うとともに、病院感染の減少およびアウトブレイク管理の支援ツールとしてのそれらの有用性を評価すること。
方法
PubMed および Scopus で検索した感染性疾患の診断用 POCT をテーマとしている公表文献のシステマティックレビュー。
結果
POCT について記述している公表文献は増加しているが、臨床環境での使用について記述した文献は依然として少ない。レビュー対象の文献からは、RS ウイルスおよびノロウイルス診断用 POCT は感染制御のための有用性が非常に高いが、それらのデータは感度と訓練に関する問題があることが示唆される。将来の POCT デバイスは分子的手法に基づくものになると予想され、感度は改善されるが使用者にとってコストが増大すると考えられる。
結論
POCT は感染制御に役割を担っているが、現時点では臨床検査室環境外でのそれらの使用に関する良質な一貫した臨床データが不足していることが、それらの導入を制限する要因となっている。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
日本は免疫クロマトグラフ法検査試薬をおそらく世界で最も大量に消費している国の 1 つである。ことにインフルエンザやノロウイルスの流行する冬場にその消費が激増する。あまりの便利さゆえに国内の迅速診断検査試薬のかなりの部分が免疫クロマトグラフ法で占められているが、欧米では PCR 法を中心とする遺伝子増幅検査の使用頻度も一定の割合を確保している。

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