クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染の診断における遺伝子検査陽性の臨床的意義

2013.08.31

Clinical relevance of a positive molecular test in the diagnosis of Clostridium difficile infection


I. Baker*, J.P. Leeming, R. Reynolds, I. Ibrahim, E. Darley
*North Bristol NHS Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2013) 84, 311-315
背景
英国保健省は 2011 年、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染をより正確に診断するために、2 段階の検査法を用いるべきであることを推奨した。その際、具体的な検査プロトコールは確立されていなかった。
目的
入院患者の C. difficile 感染症例の臨床的特性を、毒素の酵素免疫測定法(EIA)で特定された症例と、PCR 陽性により特定されたが毒素 EIA 陰性であった症例で比較すること。
方法
2011 年から 2012 年の 6 か月間に North Bristol NHS Trust に提出された水様便 2,181 サンプルの毒素およびグルタミン酸脱水素酵素(GDH)を、EIA により検査した。毒素または GDH が EIA 陽性であった合計 215 サンプルを、Cepheid Xpert PCR 法で検査した。臨床的評価が可能であった入院患者 128 例を検査結果によりグループ分けし、その下痢の持続期間と 14 日死亡率を比較した。
結果
PCR 陽性かつ毒素 EIA 陰性の入院患者では、PCR 陽性かつ毒素 EIA 陽性の患者と比較して 14 日全原因死亡率が有意に低く(11%[95%信頼区間(CI)4% ~ 23%]対37%[95%CI 19% ~ 59%]、P = 0.01)、また長期間の下痢(> 5 日または死亡時まで持続)を認める患者の割合が少なかった(19%[95%CI 9% ~ 32%]対67%[95%CI 45% ~ 84%]、P < 0.001)。毒素 EIA 陽性は、死亡(オッズ比[OR]4.7、95%CI 1.4 ~ 15.4、P = 0.01)および長期間の下痢(OR 8.6、95%CI 2.9 ~ 25.6、P < 0.001)の有意な独立予測因子であったが、PCR 陽性(GDH の EIA 陽性の条件下)は予測因子ではなかった。
結論
PCR 陽性であるが毒素 EIA 陽性ではないことの臨床的意義は疑わしく、このような患者は毒素 EIA 陽性の患者と比較して、有意な死亡率の低下と症状持続期間の短縮がみられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
現在、国内で臨床検査として最も汎用されている C. difficile の検査法は、トキシン A/トキシン B、グルタミン酸脱水素酵素(GDH)を免疫クロマトグラフ法により同時に検出できる検査法と、古典的な培養法検査である。欧米では PCR 法が普及しているが国内では現在、臨床治験が行われている状況で、まだ体外診断薬としては国内導入されていない。
この論文では、PCR 陽性、毒素 EIA 陰性の患者では症状が出ていない保菌状態であることが多かったと記載されていたが、そもそも水様便を呈した患者の検体を用いた研究のため、この点に矛盾を感じた。

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