イングランドの 2 病院における病院獲得型クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染の減少に対する清掃およびその他の介入の効果のブレイクポイントモデルを用いた評価★

2013.07.31

Impact of cleaning and other interventions on the reduction of hospital-acquired Clostridium difficile infections in two hospitals in England assessed using a breakpoint model


G.J. Hughes*, E. Nickerson, D.A. Enoch, J. Ahluwalia, C. Wilkinson, R. Ayers, N.M. Brown
*Health Protection Agency East of England, UK
Journal of Hospital Infection (2013) 84, 227-234
背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染は、依然として病院にとっての主要な課題である。標的を定めた感染制御の取り組みが病院獲得型 C. difficile 感染の減少に有効であることが示されているが、特定の介入の効果を評価するうえで有用なエビデンスはほとんど存在していない。
目的
イングランドの 2 病院の時系列データから C. difficile 感染の発生数が著明に減少した時点を統計学的モデルを用いて検出し、減少が検出された時点と感染制御介入との関連を明らかにすること。
方法
イングランドの教育病院(2002 ~ 2009 年)と地域総合病院(2005 ~ 2009 年)の病院獲得型 C. difficile 感染が疑われる症例の発生数データに対して、統計学的ブレイクポイントモデルを当てはめた。複雑性を増加させたモデル(すなわち、ブレイクポイントの数を増加させたモデル)に対して、データへの適合度が改善したかどうかの検定を行った。ブレイクポイントモデルにより区分した期間に対して、統計過程管理チャートを用いてそれぞれの期間のデータの安定性を検定した。これらの時期に両病院で実施された主な感染制御介入を、それらの主要な目的(抗菌薬、清掃、隔離、その他)ごとに分類し、モデルから推定されたブレイクポイント上にマッピングした。
結果
両病院ともに、ブレイクポイントは清掃プロトコールの強化と同時期に認められた。統計学的モデルにより種々の介入の効果を定型的に評価することが可能となり、詳細な清掃プログラムを強化することが、調査した 2 病院の病院獲得型 C. difficile 感染の著明な減少をもたらした介入である可能性が最も高いことが示された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
施設内における C. difficile の蔓延には医療従事者の手指と共用するトイレの存在が有名だが、それに加えて患者病室の環境整備が重要であることが最近、指摘されている。C. difficile 発症者が退室後の病室を十分な清掃・消毒をしないで次の患者を迎えると、環境中に残存していた菌に感染し、感染の連鎖が起こることを複数の論文が証明している。耐性菌でいうところの保菌圧(colonization pressure)的な現象が、この菌の施設内蔓延についてもいえる。ブレイクポイントという用語は感染症学では抗菌薬の感受性試験の閾値(つまり臨床的に特定抗菌薬が特定菌に効果があるかないかを判断するための線引き)に用いられるが、こうした管理統計的手法にも当てはめる点が斬新である。

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