クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染後の全原因死亡に対するリボタイプの影響★★
Effect of ribotype on all-cause mortality following Clostridium difficile infection
T. Inns*, R. Gorton, A. Berrington, A. Sails, T. Lamagni, J. Collins, J. Perry, K. Hill, J. Magee, K. Gould
*Health Protection Agency North East, UK
Journal of Hospital Infection (2013) 84, 235-241
背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染は、その後の全原因死亡に有意に関連している。C. difficile 感染に関連する死亡を調査した研究は多いが、全原因死亡をリボタイプ別に比較した研究はわずかである。
目的
C. difficile 感染後の全原因死亡率を推計すること、および死亡、リボタイプ、その他の因子との関連を調べることを目的とした。
方法
後向きコホート研究を実施した。英国北東部で 2009 年 7 月から 2011 年 6 月に毒素陽性 C. difficile 感染と診断されたすべての患者を死亡登録データと照合した。頑健な誤差分散を用いるポワソン回帰分析により 30 日全原因死亡率の相違を調べた。生存分析では、一般化ガンマ分布を示す加速寿命モデル(accelerated failure time model)を採用した。
結果
合計 1,426 例の患者を対象とした。7 日、14 日、30 日、および 90 日の全原因死亡率は、それぞれ 10.2%、16.4%、25.7%、および 38.1%であった。多変量解析からは、リボタイプ 027 は 30 日全原因死亡率が有意に高く(リスク比 1.34、95%信頼区間[CI]1.02 ~ 1.75)、リボタイプ 015 は有意に低かった(リスク比 0.46、95%CI 0.26 ~ 0.82)。生存分析では、リボタイプ 015 のみが有意に低い死亡率を予測した(P = 0.008)。病院獲得型感染患者の予測死亡率は有意に高かった(P < 0.001)。
結論
本稿は複数のリボタイプ間で死亡率を比較した初めての地域住民研究である。本研究により、C. difficile 感染後の全原因死亡率は高いことが確認された。この患者コホートではリボタイプ間で死亡率が異なるというエビデンスが得られ、診断 30 日後の死亡率はリボタイプ 027 で有意に高く、リボタイプ 015 で有意に低かった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
最近、多剤耐性菌のアウトブレイク株のなかでも“お尋ね者”を把握するために MLST 法という解析手段が多く用いられるが、今回の C. difficile の調査ではリボタイプ別検査法が効果的であり 027 型をお尋ね者株としてリストアップしている。こうしたお尋ね者株がわかれば、施設内で検出された C. difficile が 027 型かどうかを判定することにより危機管理レベルの設定が可能となり、効果的な感染対策の充実につながる。
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