院外出生新生児に対する先制攻撃的接触予防策が日本の新生児集中治療室における医療関連メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)伝播の発生に及ぼす影響★★
Impact of pre-emptive contact precautions for outborn neonates on the incidence of healthcare-associated meticillin-resistant Staphylococcus aureus transmission in a Japanese neonatal intensive care unit
I. Morioka*, M. Yahata, A. Shibata, A. Miwa, T. Yokota, T. Jikimoto, M. Nakamura, J.J. Lee, H. Yoshida, H. Yamada, S. Arakawa, K. Iijima
*Kobe University Hospital, Japan
Journal of Hospital Infection (2013) 84, 66-70
背景
新生児集中治療室(NICU)は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)伝播の高リスク環境である。NICU に移送された院外出生新生児に適用した先制攻撃的接触予防策が、医療関連 MRSA(HA-MRSA)伝播の発生に及ぼす影響を調査した研究はわずかである。
目的
NICU で実施された院外出生新生児に対する先制攻撃的接触予防策の有効性を評価すること。
方法
神戸大学病院の NICU で介入前後比較試験を実施した。院外出生新生児に対する先制攻撃的接触予防策を 2008 年 9 月に導入した。先制攻撃的接触予防策導入前の期間(2007 年 1 月から 2008 年 8 月)を、導入後の期間(2008 年 9 月から 2010 年 12 月)と比較した。入室した全新生児のデータ、3 日を超えて NICU に入室した新生児、NICU 入室期間、院外出生新生児の入室時 MRSA 陽性率、手指衛生遵守状況、および HA-MRSA 伝播の発生率を両期間で比較した。
結果
NICU に入室した院外出生新生児の割合、3 日を超えて NICU に入室した新生児の割合、NICU 入室期間、および院外出生新生児の NICU 入室時の MRSA 陽性率は、先制攻撃的接触予防策導入前の群と導入後の群の間で有意差はなかった。しかし、手指衛生遵守は向上し、HA-MRSA 伝播の発生率は、1,000 患者日あたり 3.5 から先制攻撃的接触予防策導入後は 1.3 に有意に減少した(P < 0.0001)。
結論
院外出生新生児に対する先制攻撃的接触予防策は、日本の NICU における HA-MRSA 伝播の発生率低下に有効であった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
日本からの報告である。制攻撃的接触予防策の導入効果は、施設内におけるスタッフの教育的あるいは実務的なケアの質の改善によるものが大きいと思われ、いわゆるバンドルアプローチ的な効果を出している可能性がある。手指衛生の遵守率も 50%から一気に 75%まで上がり、理想とされる 80%以上に近い値を示している。
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