結核発生率が低い国における結核の広範な院内伝播
Extensive nosocomial transmission of tuberculosis in a low-incidence country
J. Jonsson*, B. Kan, I. Berggren, J. Bruchfeld
*Karolinska University Hospital, Sweden
Journal of Hospital Infection (2013) 83, 321-326
背景
本稿では、接触者に活動性結核症例が想定以上に多かった病棟で発生した結核の院内アウトブレイクについて報告する。本アウトブレイクは、最初の 2 例の二次結核症例からの結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の遺伝子タイピングの結果を得て、初めて明らかになったものである。
目的
結核が疑われた場合の正しい感染制御策の重要性について述べること。
方法
この病棟に入院した初発患者の診断に基づき、後向きに接触者調査を実施した。
結果
肺結核により HIV 陽性患者が死亡した後 10 か月以内に、3 名の医療従事者を含む 7 名の接触者が結核を発症した。7 例中 6 例が培養により確定診断され、制限酵素断片長多型(RFLP)により、この全 6 例の結核菌分離株は初発症例の結核菌分離株と同一のクラスターに属することが確認された。医療従事者では、勤務時間が長いことと結核感染との間に関連が認められた。
結論
結核の感染制御ガイドラインを遵守すること、および医療従事者に対して最新の結核制御策に関する情報提供を継続的に行うことが重要である。結核症例の治療に携わる病棟の全職員を対象として結核の潜伏感染のスクリーニングを実施し、将来的な結核への偶発的曝露後の接触者調査の際の参照データとすべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
本事例では、3 人の家族、15 人の同室者、そして 36 人の医療従事者が接触者として取り上げられ、うち、同室者 4 人、医療従事者3人が結核を発症した。ほかに医療従事者の 15 人が潜在性結核と診断されたが、同病棟に年単位で勤務しており、事例との関連性を特定することは困難であったことが本文中で説明されていた。HIV 治療例の結核発症率は、海外の報告で 8% ~ 43%、日本で 10%とされていることを考えると、肺炎などの呼吸器症状を呈した HIV 患者のケアに際して、否定できるまでは結核を想定した空気予防策が必要であろう。
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