ヒトエンテロウイルス 71 に対するアルコールおよびアルコール製手指消毒薬の効果
Efficacy of alcohols and alcohol-based hand disinfectants against human enterovirus 71
S.-C. Chang*, W.-C. Li, K.-Y. Huang, Y.-C. Huang, C.-H. Chiu, C.-J. Chen, Y.-C. Hsieh, C.-Y. Kuo, S.-R. Shih, T.-Y. Lin
*Chang Gung University, Taiwan
Journal of Hospital Infection (2013) 83, 288-293
背景
ヒトエンテロウイルス 71(HEV71)感染症は、アジア太平洋地域における公衆衛生上の重大な脅威である。時に重度の神経系合併症を引き起こし、小児では死亡に至ることもある。その感染制御には適切な手指衛生が重要であるが、HEV71 に対して広く使用されている手指消毒薬の効果に関するデータはまだ少ない。
目的
HEV71 に対するアルコールおよびアルコール製手指消毒薬の殺ウイルス効果を調べること。
方法
一般的なアルコール製手指消毒薬(0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩 + 70%イソプロパノール)のほか、種々の濃度のイソプロパノールおよびエタノールの HEV71 に対する殺ウイルス効果を、懸濁試験およびフィンガーパッド試験を用いて評価した。
結果
懸濁試験による曝露時間 10 分での HEV71 ウイルス力価の平均 log10 減少係数は、85%エタノール > 3、95%エタノール約 6 であった。これに対して、70%および 75%エタノールと全濃度(70%から 95%)のイソプロパノールでは、同じ試験で同一時間曝露後の平均 log10 減少係数は < 1 であった。フィンガーパッド試験では、曝露時間 30 秒後の平均 log10 減少係数は 95%エタノールのみが > 4 を示したのに対し、75%エタノールとクロルヘキシジングルコン酸塩含有製剤はいずれも平均 log10減少係数 < 1 であり、HEV71 に対する効果は認められなかった。
結論
広く使用されている 70%エタノールやイソプロパノールによるアルコール製手指消毒薬の HEV71 に対する効果は不十分であった。エタノールでは 95%が最も有効な濃度であるが、それでも HEV71 を完全に不活化することはできず、多くの場合、実用的ではない可能性がある。アルコール製手指消毒薬のみによる手指消毒は、HEV71 伝播の予防には推奨されない。
サマリー原文(英語)はこちら
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