単独のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌医療従事者に関連した心臓外科部門での MRSA 長期アウトブレイク★
Prolonged outbreak of meticillin-resistant Staphylococcus aureus in a cardiac surgery unit linked to a single colonized healthcare worker
C. Haill*, S. Fletcher, R. Archer, G. Jones, M. Jayarajah, J. Frame, A. Williams, A.M. Kearns, P.J. Jenks
*Derriford Hospital, UK
Journal of Hospital Infection (2013) 83, 219-225
背景
保菌率が低い環境では保菌率が高い環境と同様に、医療従事者はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の重要であるが過小認識されたリザーバであると考えられ、患者への重大な伝播源となり得る。
目的
イングランドの心臓外科部門で発生した 10 か月間にわたる MRSA アウトブレイクについて報告すること。
方法
症例の定義は、2011 年 5 月 20 日から 2012 年 3 月 16 日にアウトブレイク菌株が新規に検出された心臓外科部門の患者および職員とした。spa タイピング、パルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)、および multi-locus variable-number tandem-repeat analysis(MLVA)法により、全症例から回収された主な分離株の特性を評価した。
結果
患者 4 例が、心臓外科部門への入院中に MRSA を獲得したと考えられた。これらの患者全 4 例と医療従事者 1 名に、同一の流行性菌株である(E)MRSA-15(spa 型 t032、パルソタイプ A、MLVA プロファイル 16-6-3-1-1-17-1-4)保菌が認められた。他の職員に MRSA 保菌は認められなかった。保菌がみられた医療従事者はアウトブレイク源と推定され、ムピロシン鼻腔内投与、クロルヘキシジン含有ボディソープ、およびリファンピシンとドキシサイクリンの経口投与による除菌を実施した。
結論
この報告は、イングランドにおいては近年、MRSA の疫学が変化していることを示しており、MRSA を保菌している医療従事者が患者への伝播に重要な役割を果たしていることを示唆している。医療従事者のスクリーニングは、医療従事者が関連する病院感染の管理のための戦略としてその有用性が益々増加しており、また初期の調査で感染源が特定できない場合にもアウトブレイクの特性を明らかにすることが可能である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
MRSA を保菌している医療従事者の発見のための検査は、倫理的な背景からルーチンには行いにくい。一方で他に原因が特定できない場合には避けることができない経路でもある。
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