欧州の 13 の外科病棟への入院時にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌が未知であることに関するリスク因子
Risk factors for previously unknown meticillin-resistant Staphylococcus aureus carriage on admission to 13 surgical wards in Europe
A. Pan*, A. Lee, B. Cooper, A. Chalfine, G.L. Daikos, S. Garilli, H. Goossens, S. Malhotra-Kumar, J.A. Martínez, A. Patroni, S. Harbarth for the SURF study group (MRSA colonisation on admission to surgical wards in Europe: identification of risk factors), in collaboration with the MOSAR-04 Study Team
*Istituti Ospitalieri di Cremona, Italy
Journal of Hospital Infection (2013) 83, 107-113
背景
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌者の早期特定は、臨床的および疫学的な理由で有意義であると考えられる。
目的
フランス、ギリシャ、イタリア、スペインの 13 の外科病棟への入院時に MRSA 保菌が未知であることのリスク因子を特定・比較すること。
方法
本研究は、外科病棟入院時に MRSA スクリーニングを受けた連続症例を対象とした前向き観察コホート研究である。社会人口学的データ、併存疾患、および想定される MRSA のリスク因子を記録した。多変量ロジスティック回帰モデルを用いて、患者の特性に基づいて入院時に MRSA 保菌が未知である確率を推定した。MRSA 保菌の予測ルール(prediction rules)を作成し、c 統計量を用いて評価した。
結果
登録患者 2,901 例に対する入院時スクリーニングにより、新規 MRSA 保菌者が 111 例(3.8%)特定された。MRSA 保菌の独立リスク因子は、尿道カテーテル留置(オッズ比[OR] 4.4、95%信頼区間[CI] 2.0 ~ 9.9)、ナーシングホーム居住(OR 3.8、95%CI 1.9 ~ 7.7)、慢性皮膚疾患(OR 2.9、95%CI 1.5 ~ 5.8)、創傷・潰瘍(OR 2.4、95%CI 1.5 ~ 4.0)、最近の入院(OR 2.2、95%CI 1.5 ~ 3.3)、糖尿病(OR 1.6、95%CI 1.02 ~ 2.5)、および年齢 > 70 歳(OR 1.5、95%CI 1.03 ~ 2.3)であった。しかし、リスク因子は施設によりばらつきがあった。全施設に共通の予測ルールの c 統計量は 0.64 であり、予測能は限定的であることが示唆された。
結論
欧州各国の MRSA 保菌者のリスクプロファイルはそれぞれの外科病棟により異なっていた。欧州の施設に共通する予測ルールの臨床的価値は限定的であったことから、施設ごとのリスク因子を特定することが重要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
医療施設により入院患者の背景は大きく異なるが、外科病棟に限定しても同様であった、という研究である。感染対策にそれほど多くの選択肢はないとしても、優先すべきもの、重点的に実施すべきものを特定するためには、自施設のデータに基づくリスクアセスメントによる客観的な評価が不可欠である。
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