医療関連尿路感染症のリスク因子、および病院の管理データを用いたサーベイランスでのこれらのリスク因子の活用:システマティックレビュー
Risk factors for healthcare-associated urinary tract infection and their applications in surveillance using hospital administrative data: a systematic review
C. King*, L. Garcia Alvarez, A. Holmes, L. Moore, T. Galletly, P. Aylin
*Imperial College, UK
Journal of Hospital Infection (2012) 82, 219-226
背景
医療関連尿路感染症(UTI)は院内感染症の多くの割合を占めており、英国では近年、カテーテル関連 UTI の減少を図るためのサーベイランスが開始されている。しかし現在のところ、病院がこれまで日常的に収集してきた膨大な管理情報はサーベイランスのために最大限に活用されていない。
目的
医療関連 UTI のリスク因子に関するエビデンスを定量的に評価すること、および病院内のデータを用いてこれらのリスク因子が画期的なサーベイランスツールの構築のため、またその情報として活用できるかどうかを明らかにすること。
方法
確立されている医療関連 UTI のリスク因子を特定するために文献のシステマティックレビューを行った。これらのリスク因子の人口寄与危険割合※(PAR%)を算出し、リスクの階層化を行った。次に病院の管理データを対象として、これらの定量化されたリスク因子を調査した。
結果
文献のシステマティックレビューで特定されたリスク因子の 30%以上は、感染の独立予測因子であった。PAR%が最も高かったのは尿道カテーテル留置であり、カテーテル留置を実施しない場合は尿路感染症の 79.3%が予防されると計算された。医療関連 UTI の独立予測因子のうち 60%を対象として、PAR%を算出した。特定された独立リスク因子のうち、尿道カテーテル留置を含む 65%は、病院の管理データセットでコード化されていた。
結論
本研究から、確立されている医療関連 UTI のリスクを定量的に評価することによって、病院の管理データを医療関連 UTI リスクのモニタリングおよびサーベイランスのために、より効果的に活用できる可能性があることが示された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者注:
※人口寄与危険割合(population-attributable risk percentage;PAR%):全集団の中で発生した疾患(またはイベント)のうち、そのリスク因子が原因となって発生したと考えられる疾患(またはイベント)の割合。It を全人口における医療関連 UTI 発生率、Iu をリスク因子への曝露がない医療関連 UTI 発生率とした場合、PAR% = (It - Iu)/It × 100 により算出される。
同カテゴリの記事
Healthcare resource use in hospitalized patients with carbapenem-resistant Gram-negative infections
B. Merrick*, M.K.I. Tan, K. Bisnauthsing, S.D. Goldenberg
*King’s College, UK
Journal of Hospital Infection (2021) 110, 7-14
Cleanliness audit of clinical surfaces and equipment: who cleans what?
Concerning emergence of a new vancomycin-resistant Enterococcus faecium strain ST1299/CT1903/vanA at a tertiary university centre in South Germany A. Rath*, B. Kieninger, A. Caplunik-Pratsch, J. Fritsch, N. Mirzaliyeva, T. Holzmann, J.K. Bender, G. Werner, W. Schneider-Brachert *University Hospital Regensburg, Germany Journal of Hospital Infection (2024) 143, 25-32
Active case finding for carbapenemase-producing Enterobacteriaceae in a teaching hospital: prevalence and risk factors for colonization
Assessment of mould remediation in a healthcare setting following extensive flooding M. Meda*, V. Gentry, E. Preece, C. Nagy, P. Kumari, P. Wilson, P. Hoffman *Frimley Health NHS Foundation Trust, UK Journal of Hospital Infection (2024) 146, 1-9