ポーランドにおける外科病棟の看護師、その担当患者、および献血候補者の C 型肝炎ウイルス抗体保有状況

2012.12.30

Seroprevalence of hepatitis C virus infection among surgical nurses, their patients and blood donation candidates in Poland


M. Ganczak*, M. Korzeń, Z. Szych
*Pomeranian Medical University, Poland
Journal of Hospital Infection (2012) 82, 266-270
目的
外科病棟の看護師および助産師の抗 C 型肝炎ウイルス(HCV)抗体保有状況を評価し、他の女性集団(同病院の担当患者および献血候補者)を対象とした横断的な血清調査のデータと比較するとともに、職業感染に関連すると考えられるリスク因子について評価すること。
方法
ポーランドの West Pomerania からランダムに選択した 16 病院の参加者が、2008 年 2 月から 2009 年 6 月に HCV 感染のリスク因子に関する質問票に記入した。第三世代の検査法を用いて、血清サンプルの抗 HCV 抗体を測定した。
結果
職員 414 名中 6 名が抗 HCV 抗体陽性であった(1.4%、95%信頼区間[CI] 0.7% ~ 3.1%)。この単回のスクリーニングによって、職員の抗体陽性を検出することができた。ロジスティック回帰モデルから、抗 HCV 抗体陽性に関しては勤務期間のみが HCV 感染のオッズ上昇と関連していることが示された(オッズ比[OR] 2.8、P < 0.006)。抗 HCV 抗体保有率は、女性患者 1,118 名では 1.1%(1,118 名中 12 名、95%CI 0.6% ~ 1.9%)、女性献血候補者 801 名では 0%(801 名中 0 名、95%CI 0% ~ 1.1%)であった。年齢が 50 歳を超える群の抗 HCV 抗体保有率は、職員と患者との間に有意差が認められた(6.9%対 1.0%、P < 0.007)。この年齢群では、看護師であることが HCV 感染のオッズ比が高いことと関連していた(OR 8.8、P < 0.005)。
結論
抗 HCV 抗体保有率を比較すると、外科病棟の看護師および助産師、患者、献血候補者の順に低下する傾向が明らかになった。このことは、職業リスクの存在を示唆していると考えられる。HCV 感染の最大のリスク因子は勤務期間であり、汚染血液・体液への曝露の累積が影響している可能性がある。外科および婦人科の職員が長期の血液曝露を受ける結果として、HCV 感染が生じ得ることを十分に認識する必要がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
日本での HCV 保有者は人口の約 1%だが、70 歳以上では 3%となっている。また、針刺し事故では汚染源となった患者のうち感染症がわかっているものの約 20%が HCV 陽性、血液・体液曝露では 35%が HCV 陽性という報告がある(職業感染制御研究会 2011 年データ)。この論文はポーランドでの研究であるが、高齢者の感染率がより高くなる日本の状況では一層、医療従事者の職業感染のリスクは高いと考えられる。

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