集中治療室の患者における銀ナノ粒子含浸トリプルルーメン中心静脈カテーテル(AgTive®)と従来のカテーテルとの比較

2012.10.31

Comparison of triple-lumen central venous catheters impregnated with silver nanoparticles (AgTive®) vs conventional catheters in intensive care unit patients


M. Antonelli*, G. De Pascale, V.M. Ranieri, P. Pelaia, R. Tufano, O. Piazza, A. Zangrillo, A. Ferrario, A. De Gaetano, E. Guaglianone, G. Donelli
*Università Cattolica del Sacro Cuore, Italy
Journal of Hospital Infection (2012) 82, 101-107
背景
中心静脈カテーテル(CVC)への細菌の定着およびカテーテル関連血流感染(CRBSI)を予防する方法として、銀含浸 CVC が提案されている。
目的
大規模な重症患者集団を対象として銀ナノ粒子含浸 CVC の有効性を評価すること。
方法
5 つの集中治療室(ICU)で前向きランダム化試験を実施した。2006 年 4 月から 2008 年 11 月に CVC を必要とした成人患者 338 例を、AgTive® 銀ナノ粒子含浸 CVC(SC)群または従来の CVC(CC)群にランダムに割り付けた。主要評価項目は、CVC への細菌定着(定義は、カテーテル先端部の培養で 15 コロニー形成単位以上の増殖が認められること)および CRBSI 発生率(米国疾病対策センター[CDC]の定義に合致するもの)とした。二次評価項目は、無感染期間(定義は、初回 CVC 挿入から血液培養初回陽性までの日数)および ICU 死亡率とした。
結果
SC 群(135 例)および CC 群(137 例)におけるベースライン時の臨床的パラメータおよび臨床検査パラメータ、ICU 入室理由、CVC 留置中の合併症、および合計 CVC 留置期間(平均値 ± 標準偏差、SC 群 13 ± 24 対 CC 群 15 ± 37 日)は同等であった。CVC への細菌定着率(SC 群 32.6%対 CC 群 30%、P = 0.7)、CRBSI 発生率(両群とも 1,000 カテーテル日あたり 3.36 件)、無感染期間(SC 群 13 ± 34 対 CC 群 12 ± 12 日、P = 0.85)、および ICU 死亡率(SC 群 46%対 CC 群 43%、P = 0.7)については、両群間に有意差は認められなかった:
結論
重症患者に対する AgTive® 銀ナノ粒子含浸 CVC の使用は、CVC への細菌定着率、CRBSI 発生率、および ICU 死亡率に有意な影響を及ぼさなかった。この CVC は、CRBSI 制御のための補助的ツールとして推奨できない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
これまでの先行研究でも銀コーティングカテーテルの CRBSI に対する総合的な有用性はいまだ明らかではなく、本論文でも同様であった。ただし、ICU での平均 2 週間の挿入期間での研究であり、その有用性の判定には限界があった。現時点では、銀コーティングカテーテルの評価について、今しばらく慎重な検討が必要であると考えられる。

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