皮膚シーラント InteguSeal® は心臓手術後の縦隔炎の予防に影響しない★★
Skin sealant InteguSeal® has no impact on prevention of postoperative mediastinitis after cardiac surgery
T. Waldow*, M. Szlapka, J. Hensel, K. Plötze, K. Matschke, L. Jatzwauk
*Dresden Heart Center, Germany
Journal of Hospital Infection (2012) 81, 278-282
背景
胸骨正中切開術後の手術部位感染症(SSI)は重篤な合併症であり、心臓手術後の有害な臨床転帰をもたらすリスクとなる可能性が高い。抗菌皮膚シーラント InteguSeal® は、SSI 発生を予防するための新たなツールとして導入された。
目的
この単一施設研究では、2 つの前向きレジストリを用いて、待機心臓手術後の縦隔炎または他のあらゆる胸部皮膚切開創 SSI の発生に対する、シアノアクリレートベースの抗菌皮膚シーラント(InteguSeal®)の予防効果を評価した。
方法
2010 年 10 月から 2011 年 4 月に、当施設で合計 998 例の患者が胸骨正中切開術による待機心臓手術を受けた。496 例に対して、胸部皮膚切開前の標準的な術前の前処置に InteguSeal® を使用した(第 1 群)。502 例に対しては、標準的な術前の皮膚の前処置に InteguSeal® を使用しなかった(第 2 群)。主要エンドポイントは術後 30 日間に縦隔炎が認められないこと、副次的エンドポイントは術後 30 日間に他のあらゆる SSI が認められないこととした。
結果
Per-protocol 解析の適格患者は合計 983 例であった(488 例対 495 例)。術後の縦隔炎の発生率は、第 1 群 2.3%、第 2 群 3.2%であった(有意差なし)。SSI の全発生率は、第 1 群 10.9%、第 2 群 11.5%であった(有意差なし)。周術期の患者特性、実施された外科手技の複雑さ、および入院期間は両群で同等であった。
結論
InteguSeal® を使用しても、胸骨正中切開術による心臓手術後の SSI および縦隔炎の発生率は影響を受けない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
1 つの病院において、胸骨正中切開術による待機心臓手術を受けた患者を 2 群に分け、切開前に前処置として抗菌皮膚シーラントを使用した群と使用しなかった群で SSI の発生率を比較した論文である。同様の研究は以前にも報告があり、抗菌皮膚シーラント使用群でオッズ比 7.5 で SSI 発生率が低かったという結果が示されていたが、症例数も少なく、研究デザインとしては十分なものではなかった(J Hosp Infec 2009;72:119-126)。本論文では、ランダム化二重盲検試験ではないものの、サンプルサイズや割り付けの方法を明記し、背景に差がない 2 群で比較したところ、SSI 発生に差がないことを示した。研究手法にも学ぶところが多い論文である。
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