利用者と選択者との乖離:感染制御に関する新規技術採用を決定する際の利害関係者の関与についての調査結果

2012.07.31

When the user is not the chooser: learning from stakeholder involvement in technology adoption decisions in infection control


R. Ahmad*, Y. Kyratsis, A. Holmes
*Imperial College London, UK
Journal of Hospital Infection (2012) 81, 163-168
背景
患者に最大限の利益を提供するためには、医療制度において効率的かつ効果的なイノベーション導入が必要であり、このことは財政上の制約がある環境では特にあてはまる。医療関連感染対策を推進するエビデンスに基づくイノベーションというものは存在するが、その理解や実施状況には大きなばらつきがあり、極めて遅々としていることもある。
目的
イノベーションプロセスにおける利害関係者の関与に注目し、イノベーションの採用決定と実施のプロセスを医療機関の視点から調査すること。
方法
英国の国民保健サービス(NHS)の 12 の医療機関で 121 件の質的インタビューを実施し、38 種類の新規技術の採用決定と実施のプロセスを評価した。
結果
利害関係者の関与状況は医療機関により様々であり、決定に際しては感染予防・制御チームのみに限定して関与している場合から、医療機関の職員が幅広く参加している場合までがみられた。組織の文化、過去の経験、およびロジスティックスに関する要因などの背景が、利害関係者の関与の程度に影響していた。利害関係者がプロセスに関与するタイミングは、(1)検討中のイノベーションの範囲、(2)選択される新規技術、および(3)新規技術の実施の成功に影響していた。調査結果を共有するため、各事例を非採用例、採用中止例、および実施成功例に分類した。また、イノベーション採用を「成功」させるうえで有効であると考えられる利害関係者の関与について、目的別の関与パターンなどを提示した。
結論
鍵となる利害関係者が関与することによって、組織の構造的・文化的背景に適合したイノベーションの採用・実施に至ると考えられるが、特に、関与が初期段階から、意思決定の段階、さらに実施段階までの全般にわたる場合に成功につながると思われる。医療機関の幅広い人員が関与することによって、感染予防・制御の認識が向上するとともに、感染予防・制御を全員の問題とするための取り組みが強化されることになる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
英国の医療システムは英国独特であり、ほとんどが国営病院である。こうした状況下の事情は必ずしも日本には当てはまらない。

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