消化管手術時の細菌に対するバリアとしてのプラスチック製創縁保護具:多施設前向き試験
Plastic wound retractors as bacteriological barriers in gastrointestinal surgery: a prospective multi-institutional trial
H.M. Mohan*, S. McDermott, L. Fenelon, N.M. Fearon, P.R. O’Connell, S.F. Oon, J. Burke, E. Keane, C. Shieldsd, D.C. Winter, Members of the University College Dublin Wound Retractor Study Group
*St. Vincent’s University Hospital, Ireland
Journal of Hospital Infection (2012) 81, 109-113
背景
手術部位感染は依然として重大な問題であり、手術創の細菌への曝露を軽減するための周術期の戦略が緊要となっている。腹腔へのアクセスに使用されるプラスチック製のリング状創縁保護具※により、切開部位を細菌から保護できる可能性がある。
目的
プラスチック製のリング状創縁保護具を使用する消化管手術を行い、切開部位の細菌への曝露について評価すること。
方法
多施設前向き観察研究。標準的な抗菌薬予防的投与後に、消化管の準清潔手術を受けた患者を対象とした(250 例、500 サンプル)。腹腔へのアクセスを容易にするため、プラスチック製創縁保護具を使用した。手術終了時に創縁保護具の内側(内腔)表面と外側(手術創側)表面からサンプルを採取し、細菌培養を行った。
結果
細菌検出率は、創縁保護具の内側表面からのサンプルでは 56%(250 件中 140 件)、外側表面からのサンプルでは 34%(250 件中 85 件)であった(P < 0.0001)。皮膚由来微生物の検出率は、創縁保護具の内側表面(245 件中 34 件[14%])および外側表面(250 件中 27 件[11%])との間に有意差は認められなかった(P = 0.108)。しかし、創縁保護具の内側表面からのサンプルの腸内細菌培養陽性率は、創縁保護具の外側表面の 2 倍であった(49%対 26%、P < 0.0001)。
結論
プラスチック製創縁保護具は、消化管手術時の手術創の腸内細菌への曝露を軽減する。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
日本でも、大腸手術を中心に、創縁保護具を利用することにより SSI が減少するかを検討した論文が複数発表されている。SSI を減少させるための複数の対策の 1 つととらえられているようである。
監訳者注:
※創縁保護具(wound retractor):切開創に装着するプラスチック製のリングであり、切開創を覆うようにして使用する。日本手術医学会による手術医療の実践ガイドラインでは、「非浸透性材質の創縁保護ドレープは、その使用により創縁の汚染を防ぎ、SSI 防止に有効な可能性がある。数種類の創縁保護ドレープが市販されており、どの製品も必ずしも有意差をもって SSI 減少効果が証明されているわけではないが、その有効性は期待できる」とされている。
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