肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)超薬剤耐性株のクロルヘキシジン感受性低下★

2012.05.31

Reduced susceptibility to chlorhexidine among extremely-drug-resistant strains of Klebsiella pneumoniae


L. Naparstek*, Y. Carmeli, I. Chmelnitsky, E. Banin, S. Navon-Venezia
*Tel Aviv University, Israel
Journal of Hospital Infection (2012) 81, 15-19
背景
肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の超薬剤耐性(XDR)株がこの 10 年間、主に患者から患者への伝播により世界中で出現している。優勢なクローンである遺伝子配列型 258(ST258)の感染率と死亡率は高く、世界的な公衆衛生上の脅威となっている。病院の消毒剤として最も広く使用されているクロルヘキシジンへの感受性低下が、本株流行の原因であろうという仮説を立てた。
目的
流行性の K. pneumoniae クローンである ST258 および非流行性 K. pneumoniae クローンのクロルヘキシジン感受性を評価・比較すること。
方法
XDR K. pneumoniae 臨床分離株 126 株に対するクロルヘキシジンの最小発育阻止濃度(MIC)を、寒天希釈法を用いて明らかにした。クロルヘキシジン存在下または非存在下での 3 種類の薬剤排出ポンプ(cepAacrAkdeA)の RNA 発現を定量的リアルタイム PCR を用いて調べた。クロルヘキシジンに対するヘテロ耐性を、ポピュレーション解析により特定した。
結果
K. pneumoniae ST258(70 株)に対するクロルヘキシジンの MIC は、その他の遺伝子配列型の K. pneumoniae(56 株)よりも高く、MIC > 32 μg/mL の株は ST258 分離株の 99%に認められたのに対して、その他の遺伝子配列型の K. pneumoniae では 52%であった(P < 0.0001)。クロルヘキシジン感受性の低下は、排出ポンプ cepAacrAkdeA の RNA 発現とは独立していることが示唆された。クロルヘキシジン耐性のサブグループが認められ、これは細菌の遺伝子配列型や MIC とは独立していた。
結論
クロルヘキシジン感受性の低下は、XDR K. pneumoniae が院内感染病原体として多くみられる原因となっていると考えられ、また、世界的な流行株である K. pneumoniae ST258 に対して選択的優位性をもたらすものと考えられる。クロルヘキシジン耐性のサブグループにはヘテロな性状がみられることから、この現象は遺伝的なものではないと考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
最近、耐性菌の世界では特定のMLST型をもったクローンやクローナル・コンプレックスによる分析が進んでいる。ただし、これらは院内伝播における疫学マーカーとしては感度が低い可能性がある。
監訳者注:
ヘテロ耐性(heteroresistance):1つの菌株内に薬剤感受性が異なる菌が混在している状態。

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