欧州におけるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症の臨床的および経済的負荷:医療施設感染に関するシステマティックレビュー

2012.05.31

Clinical and economic burden of Clostridium difficile infection in Europe: a systematic review of healthcare-facility-acquired infection


P.N. Wiegand*, D. Nathwani, M.H. Wilcox, J. Stephens, A. Shelbaya, S. Haider
*Pharmerit International, USA
Journal of Hospital Infection (2012) 81, 1-14
欧州の医療施設で獲得し、治療されたクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症の臨床的および経済的負荷を明らかにするために、PubMed、EMBASE、および学会抄録のシステマティックレビューを行った。選択基準は、2000 年から 2010 年に英語で発表され、欧州の医療施設で獲得し治療を受けたことが確認された C. difficile 感染症患者 20 例以上を研究対象集団とした報告とした。データの収集は、3 名の調査者が Cochrane Handbook と PRISMA 声明に従って非盲検的に実施した。主要評価項目は C. difficile 感染症関連の死亡率、再発率、入院期間、および費用とした。合計 1,138 報の一次論文と学会抄録が特定され、それぞれ 39 報と 30 報に絞られた。14 か国からデータが得られ、47%の研究が英国の施設からのものであった。C. difficile 感染症関連 30 日死亡率は 2%(フランス)から 42%(英国)の範囲であった。死亡率は 1999 年から 2004 年にかけて 2 倍以上に増加し、2007 年まで上昇を続けた。英国では 2007 年に減少が認められた。C. difficile 感染症再発率は 1%(フランス)から 36%(アイルランド)の範囲であった。ただし、再発率の定義は研究により異なっていた。入院期間中央値は 8 日(ベルギー)から 27 日(英国)の範囲であった。2010 年の医療費に換算して標準化した C. difficile 感染症による増分費用は、アイルランド 4,577 ポンド、ドイツ 8,843 ポンドであった。症例数で重み付けをした国別推定値では、30 日死亡率は 2.8%から 29.8%、入院期間は 16 日から 37 日であった。欧州における C. difficile 感染症の負荷の指標として高い頻度で使用されていたのは、30 日死亡率、再発率、入院期間、および医療費のデータであった。C. difficile 感染症の伝播が持続していること、またそのために医療負荷が生じていることが、抗菌薬を慎重に使用することの必要性を過小評価していると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
欧米では強毒型のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)が流行しているため、患者予後の関係上、また医療経済的な負担も課題となっている。日本とは異なる、病原菌の側の状況が発生している。我が国ではCDIに関して、検査の実施稼働を適正な水準に持ち上げるのが当面の課題である。

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