ノロウイルスの大規模アウトブレイクからの教訓:ウイルス量、患者の年齢、および病棟の設計が症状持続期間、ウイルス排出期間、および伝播率に及ぼす影響
Lessons from a large norovirus outbreak: impact of viral load, patient age and ward design on duration of symptoms and shedding and likelihood of transmission
D.G. Partridge*, C.M. Evans, M. Raza, G. Kudesia, H.K. Parsons
*Northern General Hospital, UK
Journal of Hospital Infection (2012) 81, 25-30
背景
ノロウイルスの病院アウトブレイクは医療の財政や業務に多大な支障をもたらしており、これらを最小限に抑えるためにアウトブレイクエリアでの至適な対処および隔離施設の使用を実施すべきである。
目的
症状持続期間、ウイルス排出期間、および伝播率の増大に関連する因子を特定すること。
方法
2009 年から 2010 年の冬季に英国の教育病院で発生したノロウイルスの大規模アウトブレイクの後向き観察研究。この期間中はリアルタイム PCR 法を用いて患者の診断を実施した。
結果
症状持続期間は患者の年齢と有意に関連していたが(Spearman の順位相関係数 0.197、P = 0.002)、PCR サイクルの閾値(CT)とは関連がなかった。ウイルス排出期間は、ウイルス量の多い患者ほど長期にわたることが判明した。病棟の病室内での伝播は年齢または CT のいずれとも有意な関連はなかったが、一部の病棟区域では他の区域よりも伝播の発生率が高く、これは病棟の設計の相違が関係していると考えられる。症状発生から 2 日以内に患者を隔離室またはコホーティングエリアに移動しても、前方感染(onward transmission)率に有意な影響は生じなかった(52%対 47%、P = 0.67)。
結論
今回のデータから、持続的な消化器症状がノロウイルス以外の病因によるものであると考えられる場合は、サンプル再検査の時期の指標として CT 値が使用できると考えられること、またノロウイルス感染症の症状を呈する患者は、隔離施設に移動させずに現在の病室にとどめても差し支えないことが示唆される。その病室や病棟に新規入院患者を受け入れるべきではないが、アウトブレイクが高齢患者に及んだ場合は、症状持続期間が延長するために閉鎖期間が長期にわたることを予期する必要がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
ノロウイルスは易感染性宿主か健常人かにかかわらず、感染する可能性がある。しかし、乳幼児や高齢者では重篤化の危険性があり、注意を要する。血液型が感染のリスクであることは最近、有名となっている(A型、O型が感染しやすい)。
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