診断検査室における Brucella melitensis への大規模な曝露
A large exposure to Brucella melitensis in a diagnostic laboratory
I.-C. Sam*, R. Karunakaran, A. Kamarulzaman, S. Ponnampalavanar, S.F. Syed Omar, K.P. Ng, M.Y. Mohd Yusof, P.S. Hooi, F.L. Jafar, S. AbuBakar
*University of Malaya, Malaysia
Journal of Hospital Infection (2012) 80, 321-325
背景
Brucella 属菌はエアロゾルにより容易に伝播し、検査室内感染を起こすことがある。
目的
病院の診断検査室で 6 日間にわたって発生した Brucella melitensis への大規模な曝露に対して実施された管理対策について報告すること。
方法
曝露された職員 51 名を米国疾病対策センター(CDC)のガイドラインに従って管理した。さらに、曝露がなかった検査室の職員 96 名の抗体保有状況の検査を実施した。検査には Brucella 属菌血清凝集素検査を用いた。
結果
27 名が高リスクの曝露を、24 名が低リスクの曝露を受けていた。高リスクの職員に対して曝露後予防投与を提案した。12 名(44.4%)はこれに同意し、このうち 8 名(66.7%)が治療コースを完遂した。ベースライン時、2 週目、4 週目、6 週目、および8 か月目の血清検査による追跡調査の遵守率は、全体で 45.9%であった。このように遵守率が低かったにもかかわらず、8 か月目の検査を受けた職員(遵守率 47.1%)の中にブルセラ症の臨床症状を示す者はなく、セロコンバージョンも認められなかった。検査を受けた全職員の Brucella 属菌抗体保有率は 147 名中 3 名(2.0%)であった。
結論
Brucella 属菌の経験がなく、危険が想定される微生物の取り扱い方針がなかったことが、このような曝露の長期化を招いた。現行の推奨の遵守率は低いと考えられることから、血清検査による追跡調査の最適な実施頻度と、予防治療が必要な集団についての評価を再度実施すべきである。地域流行性が低い、またはみられていない地域の検査室では、Brucella 属菌が分離される可能性に備えておく必要がある。マレーシアにおけるヒトブルセラ症の影響について、さらなる研究が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
日本では、ブルセラ症は 1999 年以降、感染症法 4 類感染症として全数把握対象疾患であるが、検査室感染の報告はない。これ以前の記録では、1962 年以前に 13 例、1981 年に 1 例の検査室感染が報告されている。まれにしか報告例のない疾患であるため症状からブルセラ症を疑うことは難しく、検査室においても必ずしも安全キャビネットが十分に活用されている状況ではないことから、検査室感染のリスクは考慮される必要がある。
一方で、検査室内での曝露による感染事例は多数報告されており、検査の際には注意が必要である。米国でも最近、ミネソタやフロリダの病院検査室内での伝播例が報告されている。
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