蒸気化過酸化水素による消毒の殺ウイルス効果

2012.02.28

Virucidal efficacy of hydrogen peroxide vapour disinfection


E. Tuladhar*, P. Terpstra, M. Koopmans, E. Duizer
*National Institute for Public Health and the Environment, The Netherlands
Journal of Hospital Infection (2012) 80, 110-115
背景
ウイルスによる表面汚染は、ウイルス伝播に重要であると考えられる。化学的消毒は効果的な介入法となり得るが、腸内ウイルスや呼吸器ウイルスに対する蒸気化過酸化水素の殺ウイルス効果についてはほとんど知られていない。
目的
施設や居室内で一般的にみられる材料上に存在している呼吸器ウイルスや腸内ウイルスに対する蒸気化過酸化水素の殺ウイルス効果を評価すること。
方法
ステンレススチール、フレーミングパネル、およびガーゼを担体として、これらの担体上でポリオウイルス、ヒトノロウイルス genotype II.4(GII.4)、マウスノロウイルス 1、ロタウイルス、アデノウイルス、および A 型インフルエンザウイルス(H1N1)を乾燥させ、アイソレータ内で 127 ppm の蒸気化過酸化水素に室温で 1 時間、曝露させた。ポリオウイルスについて、一室内の複数の場所で蒸気化過酸化水素への曝露を行った。回収されたウイルス力価を曝露のない対照群と比較し、殺ウイルス効果を調べた。PCR 法により、蒸気化過酸化水素がウイルスゲノム減少に及ぼす効果を評価した。
結果
蒸気化過酸化水素を用いた消毒により試験対象の全ウイルスが完全に不活化され、感染性粒子の減少量はステンレススチールおよびフレーミングパネルの担体上のポリオウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、マウスノロウイルスで > 4 log10、ステンレススチールおよびフレーミングパネルの担体上の A 型インフルエンザウイルス、およびガーゼの担体上の全ウイルスで > 2 log10 であった。ポリオウイルスの完全な不活化は、同一室内の複数の場所で認められた。ウイルスゲノムの減少はフレーミングパネルおよびガーゼの担体上ではわずかであったが、ステンレススチールの担体上では大幅であった。蒸気化過酸化水素に対する耐性が最も強かったのはヒトノロウイルス GII.4 ゲノムであった。
結論
蒸気化過酸化水素は、室内環境を汚染する腸内ウイルスおよび呼吸器ウイルスに対する効果的な殺ウイルス効果を有すると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
蒸気化過酸化水素による環境汚染への有効性についてはすでに多くの報告があるが、この論文では、ウイルスの種類により効果が異なること、閉じられた空間への消毒効果が期待できないこと、表面の材質により効果に差があることが明らかにされた。

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