英国の住居型介護施設における現行の消毒薬と電解水の洗浄効果の比較
Comparison of cleaning efficacy between in-use disinfectant and electrolysed water in an English residential care home
N.S. Meakin*, C. Bowman, M.R. Lewis, S.J. Dancer
*Aqualution Systems Ltd, UK
Journal of Hospital Infection (2012) 80, 122-127
背景
病院や介護施設における感染制御は依然として主要な問題である。これらの施設は衛生管理基準について定期的な監視を受けているが、視覚的な評価は必ずしも微生物汚染の程度とは相関しない。病原体の中には無生物環境で長期間生存するものがある。
目的
本前向き研究では、安定化次亜塩素酸を活性成分とし、電解水を含有する新規消毒剤(Aqualution™)の効果を、介護施設で手指が接触する表面からの微生物除去に使用されている第 4 級アンモニウム消毒薬と比較した。本研究のデザインは、2 期間のクロスオーバー試験とした。
方法
5 種類の表面を連日、4 週間洗浄し、洗浄前後にスクリーニングのためのスワブ採取を行った。スワブ培養により、各製剤による洗浄前後の表面の微生物汚染レベル(コロニー形成単位[cfu]/cm2)を比較した。
結果
表面の平均細菌量は、電解水による洗浄により 2.6(四分位範囲[IQR]0.30 ~ 30.40)cfu/cm2 から 0.10(IQR 0.10 ~ 1.40)cfu/cm2 に減少した(平均 log10 減少係数 1.042、95%信頼区間[CI]0.79 ~ 1.30)。現行の第 4 級アンモニウム消毒薬による洗浄では、細菌量は 0.90(IQR 0.10 ~ 8.50)cfu/cm2 から 93.30(IQR 9.85 ~ 363.65)cfu/cm2 に増加した(平均 log10 減少係数 -1.499、95%CI -1.87 ~ -1.12)(P < 0.0001)。病院内の表面の細菌量に関するベンチマーク基準として提案されている 2 種類の基準に従うと、電解水は現行の第 4 級アンモニウム消毒薬よりも「合格率」が高かった(80% ~ 86%対 15% ~ 21%、P < 0.0001)。
結論
電解水の殺菌作用は、現行の第 4 級アンモニウム消毒薬と比較してより効果的であったことから、電解水は介護施設などの環境中の表面に対する消毒剤として有用である可能性が示唆される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
電解水の現場での有用性については、議論の分かれるところである。この論文では第 4 級アンモニウム消毒薬と電解水による環境洗浄の有効性を比較しているが、いくつかの設定条件(盲検化されていない、スプレーによる噴霧後拭き取る方法、拭き取る布が再利用されること)を考えると、評価は慎重に行う必要があると思われる。
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