ノロウイルスの代用としてのネコカリシウイルスによる人工的な汚染表面からの蒸気化過酸化水素による汚染除去
Hydrogen peroxide vapour decontamination of surfaces artificially contaminated with norovirus surrogate feline calicivirus
K. Bentley*, B.K. Dove, S.R. Parks, J.T. Walker, A.M. Bennett
*Health Protection Agency, Porton Down, UK
Journal of Hospital Infection (2012) 80, 116-121
背景
ノロウイルスは消化器系疾患の主要な原因であり、特に病院などの医療施設で問題となっている。ノロウイルスは環境中で安定的であることが報告されているため、アウトブレイク再発防止にはアウトブレイク後の効果的な汚染除去が必要である。
目的
ノロウイルスの代用としてネコカリシウイルス(FCV)で人工的に汚染させた種々の表面からの蒸気化過酸化水素による汚染除去について検討すること。病院内で典型的にみられる表面を対象として試験を行った。
方法
病院環境の典型的な材料(ステンレススチール、ガラス、ビニール製フローリング、セラミック製タイル、およびポリ塩化ビニル[プラスチック]製コーナーリング※)を FCV で汚染させた。これらの担体を 30%(w/w)蒸気化過酸化水素に 20 分間曝露させ、その間に曝露後のウイルス力価を 5 分間隔で測定した。
結果
蒸気化過酸化水素により、曝露開始後 20 分以内に試験対象のすべての表面のウイルス力価が 4 log10 減少した。ウイルス力価の減少に最も時間を要したのはステンレススチール(20 分)、最も短時間であったのはビニール製フローリングであった(10 分)。ガラス、プラスチック、およびセラミック製タイルの表面では、ウイルス力価は 15 分以内に4 log10 減少した。蒸気化過酸化水素により、感染性病原体によるアウトブレイク後の汚染エリアの広範な汚染除去が可能である。
結論
蒸気化過酸化水素は、FCV に対する効果的な消毒法であり、種々の表面に対して有効である。したがって、ノロウイルスの病院アウトブレイク後の適切な汚染除去法の 1 つであると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
素材により期待する消毒レベルに達する時間が異なることは興味深い。実際の運用を考える際には、素材によらず確実に効果が期待できる時間作動させることに加え、噴霧後十分なエアレーションの時間が必要であるため、一定時間病室が使用できなくなることを加味して使用するシーンや対象微生物を検討する必要があると考える。
監訳者注:
※ポリ塩化ビニル製コーナーリング(PVC plastic cornering):病室の備品に使用されるプラスチック部分やコネクターなどの製品を意味すると思われる。
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