トイレ水洗後のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)のエアロゾル化の可能性:環境汚染リスク低下に対するトイレの蓋の意義
Potential for aerosolization of Clostridium difficile after flushing toilets: the role of toilet lids in reducing environmental contamination risk
E.L. Best*, J.A.T. Sandoe, M.H. Wilcox
*Leeds Teaching Hospitals NHS Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2012) 80, 1-5
背景
医療施設のトイレ設備は多様であるが、患者のトイレは一般に共用であり、蓋はない。蓋を閉めずにトイレの水を流すと、エアロゾルが発生してトイレ環境の表面汚染が生じる可能性がある。
目的
トイレ水洗後の、特に蓋を閉めない場合のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の空気伝播リスクを明らかにすること。
方法
疾患時の細菌量をシミュレートした C. difficile の便懸濁液を用いて医療施設のトイレ内で実験を行い、C. difficile のエアロゾル化を測定した。さらに、病院で一般に使用されている 2 種類のトイレで、水洗中に発生する飛沫量を測定した。
結果
トイレの便座から最大 25 cm の高さで採取した空気サンプルから C. difficile が回収された。空気サンプルから回収された C. difficile 数は水洗直後が最も多く、60 分後は 8 分の 1、その 90 分後はさらに 3 分の 1 に減少した。C. difficile による表面汚染は水洗後 90 分以内に生じたことから、比較的大型の飛沫が放出され、近接環境を汚染したことが示唆された。臨床区域の蓋のないトイレでの水洗時に放出された平均飛沫数は、トイレの種類により 15 ~ 47 個であった。C. difficile のエアロゾル化と周囲環境の汚染は、蓋のないトイレでの水洗時に発生した。
結論
蓋のない従来型のトイレでは、C. difficile による環境汚染リスクが高く、特に C. difficile 感染症が多い環境では、このようなトイレの使用を避けることを推奨する。
監訳者コメント:
トイレの便器の蓋に着目した研究であるが、蓋あり、蓋なしでの臨床研究も必要そうである。
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