香港における spa タイピングを用いたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の伝播動態の研究
Studying the transmission dynamics of meticillin-resistant Staphylococcus aureus in Hong Kong using spa typing
V.C.C. Cheng*, J.F.W. Chan, E.H.Y. Lau, W.C. Yama, S.K.Y. Ho, M.C.Y. Yau, E.Y.F. Tse, A.C.Y. Wong, J.W.M. Tai, S.T. Fan, P.L. Ho, K.Y. Yuen
*Queen Mary Hospital, Hong Kong Special Administrative Region, China
Journal of Hospital Infection (2011) 79, 206-210
本研究では、300 床の 3 次紹介外科部門におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の伝播動態を調査した。2008 年 10 月 1 日から 12 月 31 日に全成人患者を対象として、入院時および入院中の週 2 回、培養による MRSA の積極的スクリーニングを実施した。MRSA の spa 型ごとに、1,000 患者日あたりの保菌圧※、および 1,000 保菌日あたりの MRSA 院内伝播発生率を算出した。合計で、2,289 例の患者から 6,619 件の鼻腔内スワブを採取した。入院時のスクリーニングにより鼻腔内スワブに MRSA が認められた患者は 148 例(7%)であったが、このうち 68 例(46%)は高齢者ケア施設入所者であった。2,141 例中 52 例(2%)は、鼻腔内の MRSA の保菌状態が入院中に陰性から陽性に転換した。MRSA 保菌患者合計 200 例中 99 例(50%)に spa 型 t1081、30 例(15%)に t037 が認められた。1,000 患者日あたりの保菌圧は、t1081では 40.9、t037 では 22.2、その他の頻度の低い spa 型では 26.3 であった。1,000 保菌日あたりの MRSA 院内伝播発生率は、t1081(28.5 対 4.0、P < 0.01)および t037(21.5 対 4.0、P = 0.03)はその他の頻度の低い spa 型と比較して有意に高かった。病院内の MRSA 制御には、高齢者ケア施設入所者に対する事前の MRSA スクリーニング、およびこれらの患者、特に感染性の高い spa 型を保菌する患者を対象とした隔離策が重要である。
監訳者コメント:
監訳者注:
※保菌圧(colonisation pressure):本論文での定義は、試験期間中の全患者日に対する、入院時に MRSA 陽性であった患者の患者日と入院中に陰性から陽性に転換した患者の患者日の合計の比率。
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