インド北部の総合救急部門における空調ダクトおよび病室の汚染除去のための過酸化水素蒸気:推進すべきとき★
Hydrogen peroxide vapour for decontaminating air-conditioning ducts and rooms of an emergency complex in northern India: time to move on
N. Taneja*, M. Biswal, A. Kumar, A. Edwin, T. Sunita, R. Emmanuel, A.K. Gupta, M. Sharma
*Postgraduate Institute of Medical Education and Research, India
Journal of Hospital Infection (2011) 78, 200-203
救急部門エリアが過密状態や患者過多である場合、当該エリアを閉鎖しなければならないことから、病室や空調ダクトの徹底的な清掃および消毒に対して十分な注意が払われなくなることがある。時間の経過につれて、糸くず、繊維、ほこり、増殖した真菌が蓄積する。この研究では、対象エリアの閉鎖を必要としない過酸化水素薫蒸による空調ダクトの汚染除去と病室の消毒効果を評価した。チャンディーガルにある医学教育研究大学院研究所(Postgraduate Institute of Medical Education and Research)の総合救急部門は、3 階建ての建物に 9 つの空調設備と 7 つの病棟がある。7 日間をかけて作業を実施し、空調ダクトと病棟の清掃、建具・設備の清掃・消毒、さらに空調装置、ダクト、室内気の排気・薫蒸を行った。薫蒸には、11%(w/v)過酸化水素を 0.015%(w/v)硝酸銀で安定化させた配合剤である Ecoshield fog 20%水溶液を使用した。薫蒸前後のサンプルを採取して細菌培養、空気サンプルも採取した。過酸化水素薫蒸による室内気、設備、およびその他の物品の消毒効果は高かった。また、空調ダクトを効果的に汚染除去し、迅速でホルマリンよりも安価であり、有害な影響は認められなかった。患者への支障は最小限であり、5 ~ 6 時間後には薫蒸エリアに再入室可能であった。過酸化水素は、インドで使用頻度が高いホルマリン燻蒸と比較して安全かつ刺激性が少ないという利点があり、1 回の処理に要する時間も短い。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
過酸化水素蒸気の薫蒸による環境消毒は、カナダや米国の北米大陸を中心として、深刻な高病原性クロストリディウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の流行への対策として開発が進んでおり、医療環境における汚染への対策が重要な役割を果す多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の対策としても注目されている。しかし、いくらなんでもホルマリン薫蒸は危険過ぎるのでやめていただきたい。言うまでもなく、ホルマリンは危険な物質であり、労働安全衛生法施行令および特定化学物質障害予防規則によって第 2 類物質・特定第 2 類物質とされて、労働者の安全を確保するため作業環境測定が必要とされている。これまでの医療の現場は、病理組織標本などに使用することもあり、ホルマリンに対する問題意識が低くなっている場合が少なくない。病理診断部門のようにホルマリンを多用する作業環境には、局所排気装置やプッシュプル型換気装置などの配備が必要であることを強調したい。
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