癌成人におけるカテーテル関連血流感染症の発生率とリスク因子:前向きコホート研究★★
Catheter-associated bloodstream infection incidence and risk factors in adults with cancer: a prospective cohort study
P. Mollee*, M. Jones, J. Stackelroth, R. van Kuilenburg, W. Joubert, J. Faoagali, D. Looke, J. Harper, A. Clements
*Princess Alexandra Hospital, Australia
Journal of Hospital Infection (2011) 78, 26-30
中心静脈カテーテル関連血流感染症(CABSI)は癌患者の合併症を著しく増加させる。著者らは、中心静脈アクセス器材を必要としている血液・腫瘍部門の全成人患者を対象として前向きコホート観察研究を実施し、CABSI の発生率とリスク因子の評価を行った。中心静脈アクセス器材は、いずれもインターベンショナルラジオロジー専門施設の熟練した技師が超音波ガイド下で挿入した。患者 727 例の合計 1,127 の中心静脈アクセス器材を51,514 ライン・日にわたって評価した。CABSI 発生率は1,000 ライン・日あたり 2.50 件であった。CABSI に関連する因子は、中心静脈アクセス器材のタイプ(末梢挿入式中心静脈カテーテル[PICC]ラインと比較して、非トンネル型ライン[ハザード比(HR)3.50、P < 0.0001]およびトンネル型ライン[HR 1.77、P = 0.011]は高リスク)、患者の診断名(食道癌、結腸癌、直腸癌以外の固形腫瘍と比較して、中高悪性度血液悪性腫瘍は高リスク[HR 3.17、P = 0.0007]、食道癌、結腸癌、直腸癌は低リスク[HR 0.29、P = 0.019])、カテーテル挿入側(右側のラインが高リスク[HR 1.60、P = 0.027])、以前のカテーテル挿入回数(HR 1.20、P = 0.022)などであった。中高悪性度血液悪性腫瘍の患者では、PICC ラインと比較して、非トンネル型ラインで CABSI リスクが有意に多く(HR 3.9、P < 0.001)、トンネル型ラインでは高い傾向がみられた(HR 1.43、P = 0.12)。また、カテーテルを右側に挿入した場合のほうが CABSI リスクが高かった(HR 1.62、P = 0.047)。本研究は成人癌患者に対する標準化された CABSI サーベイランス戦略の有用性を明らかにするものであり、この患者集団に PICC ラインを使用すべきことを支持するデータをさらに提供するとともに、カテーテルラインの挿入側が CABSI リスクに影響する可能性を示唆している。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
感染予防の観点からの PICC の有用性を導き出している論文である。我が国でもグローションカテーテルとして償還点数の付与された診療材料があり、注目される。
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