オランダの介護施設における医療関連感染症の 3 年間の有病率調査★★

2011.05.01

Three-year prevalence of healthcare-associated infections in Dutch nursing homes


A. Eikelenboom-Boskamp*, J.H.M. Cox-Claessens, P.G.M. Boom-Poels, M.I.J. Drabbe, R.T.C.M. Koopmans, A. Voss
*Radboud University, The Netherlands
Journal of Hospital Infection (2011) 78, 59-62
2007 年 11 月からの 3 年間(2007 年から 2009 年)、オランダ・ナイメーヘン地区にある介護施設入居者を対象として、年 1 回、医療関連感染症の 1 日有病率調査を実施した。介護施設に適用される国としての医療関連感染症の定義がないため、米国疾病対策センター(CDC)による血流感染症、下気道感染症、細菌性結膜炎、および胃腸炎に関する基準に基づく修正定義を使用した。尿路感染症のサーベイランスにはオランダ高齢者介護担当医師連合(Dutch Association of Elderly Care Physicians)が作成した基準を用いた。高齢者介護担当医師が入居者の特性の記録およびデータ収集を行った。3 年間で調査対象となった介護施設入居者は 2007 年 1,275 名、2008 年 1,323 名、2009 年 1,772 名であり、医療関連感染症有病率はそれぞれ 6.7%、7.6%、7.6%であった。年齢(平均 81 歳)と性別(男性 31%、女性 69%)に関する人口統計学的特性は 3 年間でほぼ同一であった。最も有病率が高い医療関連感染症は尿路感染症であり、それぞれ 3.5%、4.2%、4.1%であった。医療関連感染症の発症が最も多かったのはリハビリテーション病棟入居者であった。医療関連感染症有病率は介護施設によりばらつきがあった(範囲 0.0% ~ 32.4%)。この論文は、オランダの介護施設における医療関連感染症有病率調査の初めての結果報告である。医療関連感染症の時点有病率調査は、質改善サイクルの一環として、介護施設における感染制御プログラムの基盤として重要であり、この調査によって介護施設での患者の安全に対する取り組みをさらに強化することが可能となる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
急性期ケア医療機関だけではなく、高齢者介護施設やリハビリテーション施設などの長期療養施設においても一定の医療ケアは提供されており、医療関連感染症のリスクが存在していることを認識しなければならない。医療提供体制はそれぞれの国、コミュニティでの差異があり、医療関連感染リスクアセスメントに基づく現場の継続的な質改善と意思決定のためにもサーベイランスによるデータ収集が必要である。

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