台湾の院内通行管理バンドルおよび医療従事者の院内重症急性呼吸器症候群の根絶★

2011.04.01

Taiwan’s traffic control bundle and the elimination of nosocomial severe acute respiratory syndrome among healthcare workers


M.-Y. Yen*, Y.-E. Lin, C.-H. Lee, M.-S. Ho, F.-Y. Huang, S.-C. Chang, Y.-C. Liu
*National Yang-Ming University, Taiwan, ROC
Journal of Hospital Infection (2011) 77, 332-337
院内通行管理バンドルは、院内感染の流行を予防することを目的として策定された手段を組み合わせたものである。台湾で重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した 2003 年に、医療従事者の院内感染予防に最も有効であった因子を明らかにするために、一連の感染制御対策を後向きに評価した。発熱スクリーニングコーナー(fever screening station)、発熱患者のトリアージ、SARS 患者のその他の患者からの分離、患者と医療従事者の出入り口・通路を別にすること、および手洗い設備の増設は、いずれも医療従事者に対する予防効果が証明された(単変量解析、P < 0.05)。多重ロジスティック回帰分析では、(i)リスクの異なる区域間のチェックポイントに、手袋着用で擦式手指消毒を行うためのアルコールディスペンサーを設置すること、および(ii)救急外来の外部に発熱スクリーニングコーナーを配置して発熱のスクリーニングを行うことが、医療従事者の SARS 院内感染を効果的に最少化する有意な方法であった(P < 0.05)。今後の感染症流行時には、厳格な感染制御対策を達成する手段として、院内通行管理バンドルを適用すべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
SARS に限らず、感染症の流行時には患者と医療従事者の動線を分離することの有効性は想像に難くない。本論文では、医療従事者の SARS 院内感染が 1 名以上発生した 19 施設と、発生しなかった 31 施設における感染制御対策の相違を検討している。効果がありそうな感染対策の有効性が有意差をもって証明されたことは望ましい。ただし、手袋を着用したままアルコール性手指消毒薬による手指衛生を行うという点については、他国で適切と考えられている手技との若干の乖離がある。本来、手袋を外して手指衛生を実施すべきところであろう。

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