血液培養コンタミネーション防止のための静脈穿刺部位消毒に使用する皮膚消毒薬:メタアナリシスによるシステマティックレビュー★★

2011.03.03

Skin antiseptics in venous puncture-site disinfection for prevention of blood culture contamination: systematic review with meta-analysis

D. Caldeira*, C. David, C. Sampaio
*Clinical Pharmacology and Therapeutics Laboratory, Portugal

Journal of Hospital Infection (2011) 77, 223-232
 

静脈穿刺による血液培養の検体採取は菌血症を診断するための一般的な臨床手順である。血液培養のコンタミネーションは臨床判断の誤りや不要な医療費の原因となり得る。この研究の目的は、静脈穿刺による血液培養のコンタミネーション防止のための皮膚消毒薬に関する無作為化対照試験を対象としたシステマティックレビューである。2010 年 6 月に、CENTRAL(Cochrane Library、2010 年 4 月発行)、MEDLINE、EMBASE、および mRCT を用いたデータベース検索を実施した。静脈穿刺による血液培養で使用した皮膚消毒薬を評価しているすべての無作為化対照試験が収集された。血液培養のコンタミネーションが発生する相対リスク(RR)と 95%信頼区間(CI)をランダム効果解析法により算出した。レビュー担当著者 1 名が各研究を評価して、他の著者はそれを確認した。6 つの研究が適格とされた。単独試験の比較からは、アルコール性ヨードチンキは非アルコール性ポビドンヨードよりも優れており、イソプロピル/アセトン/ポビドンヨードはイソプロピル/ポビドンヨードより優れていた。2 つの試験の 4,757 検体の血液培養に関するメタアナリシスでは、アルコール性クロルヘキシジンが非アルコール性ポビドンヨードより優れていた(RR 0.33、95%CI 0.24 ~ 0.46)。4 つの試験結果から 21,300 検体の血液培養をまとめて検討すると、アルコール性製剤は非アルコール性製剤より優れていた(RR 0.53、95%CI 0.31 ~ 0.90)。2 つの試験による 13,418 検体の血液培養からは、ヨードチンキによる血液培養のコンタミネーション防止はポビドンヨードより優れていなかった(RR 0.79、95%CI 0.54 ~ 1.18)。アルコール性ヨード製剤と非アルコール性ヨード製剤との相違は認められなかった(RR 0.79、95%CI 0.53 ~ 1.17)。クロルヘキシジンとヨウ素化合物の比較は決定的なものではなかった。静脈穿刺による血液培養のコンタミネーション防止におけるアルコール単独のヨウ素製剤に対する非劣性は認められなかった。アルコールとポビドンヨードの併用には有用性はないと考えられた。アルコール性クロルヘキシジン溶液は水性ポビドンヨードと比べて血液培養偽陽性が少なかった。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント
皮膚上には表皮ブドウ球菌など多くの常在菌が存在するため、血液培養を採取する際にはこれら皮膚常在菌による汚染 = コンタミネーション(いわゆるコンタミ)により偽陽性を示す場合がある。CUMITECH(Cumulative Techniques and Procedures in Clinical Microbiology;臨床微生物学検査における技術と手順の蓄積)血液培養検査ガイドラインには、ヨードチンキ製剤とクロルヘキシジン製剤はほぼ同等の効果があり、そのいずれもポビドンヨード製剤より効果的に汚染率を下げることができる可能性が示唆されるとある。一方、米国感染症学会(Infectious Diseases Society of America;IDSA)ガイドラインでは、血液培養の際の皮膚消毒として、ポビドンヨードよりもアルコール、ヨードチンキまたは 0.5%以上のクロルヘキシジンを配合したアルコール製剤の使用を推奨している。特にポビドンヨードは皮膚への接触時間を十分に保つ必要があり、注意が必要である。

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