パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)変異株に対するトリクロサンの抗菌特性へのメチル化の影響
Influence of methylation on the antibacterial properties of triclosan in Pasteurella multocida and Pseudomonas aeruginosa variant strains
A.B. Clayborn*, S.N. Toofan, F.R. Champlin
*Northeastern State University, Oklahoma, USA
Journal of Hospital Infection (2011) 77, 129-133
日和見感染細菌であるパスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)は、外膜の透過性が著しく高いため、疎水性殺生物剤トリクロサンに対する感受性が極めて高いのに対して、院内感染起因菌である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、水溶解限度をはるかに超える濃度のトリクロサンに対しても自然耐性を示す。トリクロサンは医療用製品およびパーソナルケア製品に広く含まれており、それに伴いメチルトリクロサンなどの代謝物が環境系および生体系に蓄積するようになっている。本研究の目的は、トリクロサンのメチル化によって医療現場での消毒効果が低下している可能性を検討すること、および想定される耐性機序を明らかにすることである。高度に標準化されたディスク拡散法およびバッチ培養の比濁法による測定を用いて、トリクロサン感性・耐性菌株とメチルトリクロサンとの関連を評価した。野生型の緑膿菌親株、細胞外エンベロープが透過性を示す表現型の緑膿菌変異株、および耐性野生株を外膜透過性増加化合物 48/80 を用いてトリクロサン感性とした株を調べた。検討したすべての菌株がメチルトリクロサン耐性であり、緑膿菌親株を除くすべての菌株が広い濃度範囲のトリクロサン感性を示した。外膜透過性の表現型を示す両菌株、すなわち変異株および化学的に感受性を増加させた野生株はいずれもトリクロサン感性であったが、メチルトリクロサン感性は示さなかった。以上のデータから、トリクロサンはメチル化を受けることにより種々の病原菌に対する増殖抑制効果を喪失し、これは細菌外膜の完全性とは無関係であるという考え方が支持される。また、殺生物剤の修飾がトリクロサンに対する緑膿菌の自然耐性に関与している可能性も、結論として挙げることができる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
グラム陰性菌の消毒薬耐性に関する基礎的検討。消毒薬や菌株の修飾により感受性が変化する点は興味深い。
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