基質特異性拡張型 β-ラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌の根絶のための新規除菌レジメンの有効性★

2011.02.28

Effectiveness of a new decolonisation regimen for eradication of extended-spectrum β-lactamase-producing Enterobacteriaceae


M. Buehlmann*, T. Bruderer, R. Frei, A.F. Widmer
*University Hospital Basel, Switzerland
Journal of Hospital Infection (2011) 77, 113-117
基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生グラム陰性菌が世界的に拡散している。ESBL 産生菌の保菌は数年間にわたって持続することもあり、伝播を促進すると考えられる。接触隔離予防策や抗菌薬使用の制限などの介入が実施されるが、ESBL 産生菌の除菌法は確立していない。標準化された除菌プログラムの有効性を明らかにするため、2000 年 1 月から 2008 年 1 月にかけてオープンラベルの前向きコホート対照研究を実施した。ESBL 産生菌陽性患者に対して、直腸、咽頭、および尿のスクリーニングを定期的に実施した。除菌法として 0.2%クロルヘキシジンによる 1 日 3 回の口腔洗浄(咽頭の保菌に対して)、paromomycin 1 g の 1 日 4 回投与(腸の保菌に対して)、および尿路の保菌に対する経口抗菌薬投与を実施した。ESBL 産生菌の除菌成功の定義は、追跡時のスクリーニングのサンプルセット(咽頭、直腸、尿)が 1 回以上陰性であることとした。登録患者 100 例のうち、ESBL 産生菌感染患者は 83%、保菌患者は 17%であった。検出頻度が高い病原菌は大腸菌(Escherichia coli)(71%)および肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(25%)であった。追跡時に ESBL 産生菌陰性となった患者は、全体で 76%(100 例中 76 例)であった。治療が成功した患者の 55%(76 例中 42 例)は、感染症に対する全身治療を受けていた。除菌を完了した患者の 83%(18 例中 15 例)は、追跡期間中に ESBL 産生菌が検出されなかった。除菌成功はリスク因子の数および保菌部位と関連があった。除菌は選択された特定の患者群に有益であると考えられ、これにより ESBL 産生菌の保菌期間が短縮し、その後の伝播リスクが低下する可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
ESBL に関する除菌の有効性や必要性についてはいまだ検討が不十分である。除菌治療は新たな耐性菌を生み出す可能性や C. difficile 感染症のリスクもあり、研究することすら容易ではない。実際、本研究においても 100 例の登録患者のうち 35 名しか除菌を実施されておらず、しかも 17 例は除菌レジメンから途中で脱落している。さらに、除菌が完了した患者のほとんどがその後の ESBL 検出陰性、すなわち除菌成功例であるが、脱落例においても約半数その後の ESBL 検出陰性である。すなわち、除菌レジメンの妥当性は言うに及ばず、除菌の必要性すら検討が困難な状況である。ともあれ、興味深い文献である。

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