給水システムのレジオネラ菌を制圧するための各種手法の有効性:イタリアの大学病院の 10 年間にわたる経験
Effectiveness of different methods to control legionella in the water supply: ten-year experience in an Italian university hospital
I. Marchesi*, P. Marchegiano, A. Bargellini, S. Cencetti, G. Frezza, M. Miselli, P. Borella
*University of Modena and Reggio Emilia, Italy
Journal of Hospital Infection (2011) 77, 47-51
病院給湯システムのレジオネラ菌汚染を制圧するために、高濃度塩素処理、加熱ショック、二酸化塩素、モノクロラミン、給湯タンク、および採水口フィルターを使用した 10 年間の経験を報告する。加熱ショック消毒では 1 ~ 2 か月以内に処理前の汚染レベルに戻った。二酸化塩素では 100 cfu/L 未満のレベルを維持することができ、またモノクロラミンの予備的試験の結果は十分に良好であった。採水口フィルターの設置または 58℃を超える温度の電気給湯タンクの使用では汚染は認められず、院内感染レジオネラ症は 10 年間の観察期間で認められなかった。レジオネラ菌汚染の減少効果は高いほうから、フィルター、給湯タンク、二酸化塩素、高濃度塩素処理、加熱ショックの順序であった。二酸化塩素が最も安価な方法であり、次いで加熱ショック、高濃度塩素処理、給湯タンク、フィルターの順であった。二酸化塩素と電気給湯タンクの併用を推奨する。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
レジオネラ症(legionellosis)は、レジオネラ(Legionella)属菌を起因菌とする感染症で、レジオネラ肺炎と、肺炎を伴わない自然治癒型のポンティアック熱の 2 つの病型がある。Legionella属菌は自然の土壌や淡水に生息しており、エアロゾルを発生する人工環境である循環式浴槽、冷却塔、加湿器、ネブライザーなどで菌が大量に増殖した場合、健康成人も含めたアウトブレイクが発生することが報告されている。医療環境においても水の管理には注意する必要がある。レジオネラ症の潜伏期間は一般に 2 ~ 10 日間である。診断には尿中レジオネラ抗原(ただし、肺炎の起因菌として最も多い Legionella pneumophila serogroup 1 にのみ対応しており、その他の Legionella 属菌は対象としていないので注意が必要)や特殊染色検査・特殊培養検査が必要であり、検査部門との連携が極めて重要である。
なお、Legionella 属菌がヒト-ヒト間で感染伝播したとの報告は認められない。
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