糞便検体中のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の検出におけるグルタミン酸脱水素酵素の意義:メタアナリシス

2011.01.31

The role of glutamate dehydrogenase for the detection of Clostridium difficile in faecal samples: a meta-analysis


N. Shetty*, M.W.D. Wren, P.G. Coen
*University College London Hospitals, UK
Journal of Hospital Infection (2011) 77, 1-6
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)は重篤な、時として致死的な病院感染を引き起こす。患者の至適管理、感染制御、および信頼性の高いサーベイランスを確実に行うためには、C. difficile 感染の高い臨床検査診断精度が必要である。C. difficile 毒素を対象とした市販の ELISA 法は、細胞培養による細胞毒性検査や毒素産生性検査培養と比較して感度が低い。著者らは C. difficile 感染の診断におけるグルタミン酸脱水素酵素(GDH)の意義に関するメタアナリシスを行った。21 報の論文を分析し、このうち 8 報を除外した。「ゴールドスタンダード」である標準検査法(細胞毒性検査または毒素産生性検査培養)を使用している原著論文を対象としたほか、ゴールドスタンダードではなくても標準検査法として分離株の毒性検査を実施せずに培養検査を行っている論文も対象とした。除外基準は、ゴールドスタンダードの標準検査法が用いられていないこと、およびその研究が目的としている検査(index test)がゴールドスタンダードである場合とした。研究結果間の不均一性が大きかったため、サマリー ROC 解析が必要であった。メタアナリシスから、C. difficile の糞便中の存在の GDH による診断精度は高いことが示され、培養検査と比較した場合の感度と特異度は 90% を超えていた。この結果は、サマリー ROC プロットによって確証された。毒素産生菌株と非産生菌株を検出するために毒素産生株の代替指標として GDH を用いた場合、特異度は 80% ~ 100%、偽陽性率は約 20% であった。しかし、GDH 検査は感度と陰性適中率が高く、毒素検出検査を併用する二重検査アルゴリズムでは強力な検査法になると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
我が国でも C. difficile の共通抗原であるグルタミン酸塩脱水素酵素(glutamate dehydrogenase;GDH)の 43 kD のサブユニットをポリクロナール抗体で検出するキットが発売されているが、A/B毒素を検出するキットのほうが汎用されている。感度を高めるためには培養検査も実施する必要があり、アウトブレイク調査向けには菌株の保存が欠かせない。

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