病院内の有害事象発生リスクの抑制:列車事故のような場合は集計・報告よりも回避することが重要である
Limiting risk of hospital adverse events: avoiding train wrecks is more important than counting and reporting them
A. Morton*, D. Cook, K. Mengersen, M. Waterhouse
*Princess Alexandra Hospital, Australia
Journal of Hospital Infection (2010) 76, 283-286
これまでは、国や州レベルで導入される目標は、多剤耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症などの有害事象の大発生を受けて設定されてきた。病院の資源は有限であるが、このような目標設定の結果として、標的とした有害事象への対処に資源が転用されてしまう可能性がある。有害事象の発生数が減少に向かうと、当初は成功であると判定されるかもしれないが、根本的な問題に対処しているとは限らず、また、それ以外の非標的有害事象が増加し得るというエビデンスもみられる。さらに、個々の観測値は不規則変動の影響を大きく受けることがある。このため、医療施設が実践した対応についての結論を導き出すために、比較や目標を用いることは困難である。有害事象の発生数を集計することは不可欠であるが、患者の有害エピソードを回避するために重要なことは予防である。予防にはエビデンスに基づいたシステムを導入することが必要である。すでに多くの有害事象に対して、「バンドル」やチェックリストが適用できるようになっている。このようなシステムを適切に導入し継続すれば、予測し得る最低レベルにまで有害事象の発生を減少させることが可能である。残念ながら、知識の普及と積極的な促進策にもかかわらず、高い遵守率を達成し、持続させることは、多くの場合困難である。エビデンスに基づくシステムを持続させるための方法を十分に理解し、導入する必要がある。リーダーシップ・権限付与、エビデンスの適用、習慣の変革、および評価法などからなる全体的なシステムの一環としてチェックリストを活用することは、このような問題の克服に有用である可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
同カテゴリの記事
Who should be screened for carbapenemase-producing Enterobacterales and when? A systematic review M. Bar Ilan*, A. Kjerulf *Rigshospitalet, Denmark Journal of Hospital Infection (2023) 142, 74-87
Carbapenemase-producing Enterobacteriaceae digestive carriage at hospital readmission and the role of antibiotic exposure
Incidence and risk factors for hospital-acquired cholecystitis H. Ito*, A. Watanabe, S. Okaya, R. Ogawa, N. Shimojo *University of Tsukuba Hospital, Japan Journal of Hospital Infection (2022) 128, 13-18
Guidance on the use of respiratory and facial protection equipment
Effects of human serum albumin, ibuprofen and N-acetyl-L-cysteine against biofilm formation by pathogenic Escherichia coli strains