医療関連尿路感染症の原因となるグラム陰性桿菌のフルオロキノロン耐性のリスク因子★

2010.12.31

Risk factors for fluoroquinolone resistance in Gram-negative bacilli causing healthcare-acquired urinary tract infections


P. Rattanaumpawan*, P. Tolomeo, W.B. Bilker, N.O. Fishman, E. Lautenbach
*University of Pennsylvania School of Medicine, Pennsylvania, USA
Journal of Hospital Infection (2010) 76, 324-327
フルオロキノロン耐性グラム陰性桿菌による尿路感染症の有病率が上昇している。フルオロキノロン耐性のリスク因子について調査したこれまでの研究は、大腸菌(Escherichia coli)に起因する尿路感染症のみを対象としているか、保菌と感染とを区別していなかった。グラム陰性桿菌による医療関連尿路感染症におけるフルオロキノロン耐性のリスク因子を特定するため、University of Pennsylvania Health System附属の2施設で症例対照研究を実施した。尿培養でグラム陰性桿菌陽性、かつ米国疾病対策センター(CDC)の医療関連尿路感染症の基準に合致した患者を適格とした。症例はフルオロキノロン耐性グラム陰性桿菌による尿路感染症患者とし、対照はフルオロキノロン感性グラム陰性桿菌による尿路感染症患者として、対照と症例を菌株検出月および感染菌種によりマッチさせた。2003年1月1日から2005年3月31日までに、合計で症例251例と対照263例を研究対象とした。フルオロキノロン耐性の独立リスク因子は、男性(補正オッズ比[OR]2.03、95%信頼区間[CI]1.21~3.39、P = 0.007)、アフリカ系米国人(OR 1.80、95%CI 1.10~2.94、P = 0.020)、慢性呼吸器疾患(OR 2.58、95%CI 1.18~5.62、P = 0.017)、長期ケア施設入居者(OR 4.41、95%CI 1.79~10.88、P = 0.001)、過去2週間以内の入院(OR 2.19、95%CI 1.31~3.64、P = 0.003)、内科系病棟への入院(OR 2.72、95%CI 1.63~4.54、P < 0.001)、および最近のフルオロキノロン投与(OR 15.73、95%CI 6.15~40.26、P < 0.001)、最近のcotrimoxazole投与(OR 2.49、95%CI 1.07~5.79、P = 0.033)、および最近のメトロニダゾール投与(OR 2.89、95%CI 1.48~5.65、P = 0.002)などであった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
耐性菌感染症のリスク因子を明らかにすることは、耐性菌感染症を減らすために必要な研究である。本研究はその点で意義深い。明らかにされた独立リスク因子は、人種を除いて日本でもあてはまるものが多いと思われ、参考になる。

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