メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)におけるムピロシン耐性に関連するリスク因子★★
Risk factors associated with mupirocin resistance in meticillin-resistant Staphylococcus aureus
A.R. Caffrey*, B.J. Quilliam, K.L. LaPlante
*Veterans Affairs Medical Center, Rhode Island, USA
Journal of Hospital Infection (2010) 76, 206-210
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)除菌プログラムが適用される機会が増加しており、ムピロシン耐性の出現が報告されるようになっている。しかし、ムピロシン耐性と関連する患者側のリスク因子については不明である。この研究では2004年7月1日から2008年6月30日の間にMRSA培養陽性であったプロビデンス退役軍人病院の患者を対象として、頻度マッチング※を用いた症例対照研究により、MRSAのムピロシン耐性の独立予測因子を特定した。四半期毎および1年毎の培養実施日に基づき、ムピロシン耐性症例40例にムピロシン感受性270例の対照をマッチさせた。補正した条件付きロジスティック回帰モデルにより、MRSAのムピロシン耐性と関連する有意な独立予測因子として以下の3つが特定された。(1)培養前1年間のムピロシン投与[オッズ比(OR)9.84、95%信頼区間(CI)2.93~33.09]、(2)培養を実施した入院前1年間の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染症(OR 4.85、95%CI 1.20~19.61)、および(3)培養前1年間のセフェピム投与(OR 2.80、95%CI 1.03~7.58)。ムピロシンの投与歴は、感受性試験で低レベルのムピロシン耐性[最小発育阻止濃度(MIC)8~128 mg/L、症例23例、対照202例、OR 6.32、95%CI 1.58~25.33]および高レベルのムピロシン耐性(MIC ≧ 256 mg/L、症例17例、対照151例、OR 11.18、95%CI 1.89~66.30)と関連があった。著者らの知る限り、この研究はムピロシン投与歴とその後のMRSAにおけるムピロシン耐性との強い関連を明らかにした初めての症例対照研究であり、低レベルおよび高レベルのムピロシン耐性との関連においてその頑健性を示した。ムピロシンによる除菌は、使用頻度が増加すると耐性により有効性が低下する可能性があるため、この方法を採用する医療機関ではムピロシン感受性をモニタリングすることが極めて重要となる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
MRSAがムピロシンに対しても耐性を獲得することが明確にされた。ムピロシンの鼻腔内投与は、外科手術部位感染症をはじめとする医療関連感染症予防やMRSAアウトブレイク対策に有用ではあるが、ルーチンで無批判に乱用するとムピロシン耐性MRSAが蔓延する結果となる可能性が示唆された点で非常に重要な報告である。
監訳者注:
※頻度マッチング(frequency matching):症例対照研究において対照をマッチングさせる方法のひとつ。マッチング要因(この研究では培養検査実施日)の各々の区分(階層)に含まれる対照数が、症例と同様の分布となるように対照をマッチさせる手法。
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