発現頻度が低い有害事象の系列分析

2010.10.30

Sequential analysis of uncommon adverse outcomes


A. Morton*, K. Mengersen, M. Waterhouse, S. Steiner, D. Looke
*Princess Alexandra Hospital, Australia
Journal of Hospital Infection (2010) 76, 114-118
手術部位感染(SSI)などの発現頻度が低い有害事象の解析には系列分析(sequential analysis)が適切である。術後入院期間が短い場合は退院後のSSIが多発するが、多くは表在性感染症である。深部および臓器・体腔の(複雑な)SSIの発生率は低いが、より確実に検出することができ、創傷ケアのモニタリングに適している。退院後に発生した深部および臓器・体腔のSSIでは通常は再入院が必要となるため、その発生件数を正確に計数することが可能である。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)による菌血症の系列分析も必要である。予防の鍵となるのは、「バンドル」やチェックリストなどのエビデンスに基づいたシステムの導入である。定期的な死亡例・合併症例カンファレンスが必要であり、さらにその後の独立監査が必要と考えられる。信頼性の高いシステムにおいてまれに有害事象が発生する際には、逐次的な統計解析を実施することが、データの提示、変動の検出、およびプロセスが変更されることの阻止のために有用である。集計表作成、観測値から推定値を減じた値(OE)の累積グラフ、および漏斗プロット法は、累積和解析により有害事象の連続的発生が明確に認められた場合に有用である。これらの解析方法を前向きに使用することにより、それまでは顕在化しなかった有害事象の発生率および発生件数のパターンや変遷が職員に可視化され、検出可能になると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
様々なサーベイランスにより感染率などの医療関連感染発生状況が監視されうるが、その変動はアウトブレイクなどの異常を察知する上で最も重要な解析項目である。少々専門的であるが、本論文は系列分析による変動の詳細な分析について説明している。統計学的解析に興味のある方はご一読をお勧めする。

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*University College London, UK
Journal of Hospital Infection (2020) 105, 632-637

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