全国的有病率調査にみられる病院間差とケースミックス★

2010.10.30

Interhospital differences and case-mix in a nationwide prevalence survey


M. Kanerva*, J. Ollgren, O. Lyytikainen on behalf of the Finnish Prevalence Survey Study Group
*National Institute for Health and Welfare, Finland
Journal of Hospital Infection (2010) 76, 135-138
有病率調査は、病院1施設または全国レベルのいずれであっても、医療関連感染の概要を把握するための便利な手法であり、時間の節約が可能である。有病率の直接比較は困難である。本研究では、病院ごとの有病率に対するケースミックス補正の影響を評価した。2005年に、フィンランドの3次病院全5施設、2次病院全15施設、その他の急性期病院10施設(全40施設中の25%)が初めての全国有病率調査に参加した。医療関連感染の定義には米国疾病対策センター(CDC)の基準を使用した。人口統計学的特性、基礎疾患の重症度、カテーテルや人工呼吸器の使用、および手術歴などのデータを収集した。別の病院に関連していると考えられる医療関連感染の患者は除外した。多変量ロジスティック回帰モデルによる医療関連感染リスク因子、および間接的な標準化法を用いて、ケースミックス補正後の医療関連感染有病率を算出した。全体で、成人患者8,118例中587例(7.2%)に1回以上の感染症が発生し、病院ごとの有病率は1.9%から12.6%の範囲であった。標準化のための多変量解析には、医療関連感染の既知のリスク因子または単変量解析により特定したリスク因子(年齢、男性、集中治療、Charlson併存疾患指標およびMcCabe指標の高値、人工呼吸器、中心静脈または尿路カテーテル、および入院中の手術)を算入した。ケースミックス補正後の有病率は2.6%から17.0%の範囲であり、病院ごとの順位は有病率の観察値とは異なっていた。病院11施設(38%)では、有病率の観察値による順位がケースミックス補正後の値から予測されるよりも低かった。有病率を病院間で比較する場合は、ケースミックスを考慮すべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
本研究は、病院ごとの医療関連感染発生頻度の大まかな比較を行い、大きな幅をもって異なることを明らかにした。しかしながら、どのような医療関連感染が発生しているかを詳細に記述しておらず、真の比較として妥当であるかは少々疑問が残る。いずれにせよ、単一のデバイス関連感染(CLABSIなど)と異なり、病院全体の状況をあまり労力をかけずに調査し、病院間で比較することは、一定の意義があるであろう。

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