表面に付着したプリオンの自動汚染除去法★
Automated decontamination of surface-adherent prions
A. Schmitt*, I.M. Westner, L. Reznicek, W. Michels, G. Mitteregger, H.A. Kretzschmar
*Ludwig-Maximilian-Universitat, Germany
Journal of Hospital Infection (2010) 76, 74-79
現時点では、再利用可能な手術器具に付着したプリオンを確実に不活化・除去することができる、ウォッシャー・ディスインフェクターを用いた日常的に実施が可能な汚染除去法はない。これは、プリオン病の医原性伝播の確実な予防は不可能であることを意味する。手術器具の一般的な日常的な再処理手順の中に組み入れることができる、有効なプリオン汚染除去法が求められている。この研究ではウォッシャー・ディスインフェクターによるプリオン除去のために設計された自動処理法の評価について報告する。評価には、表面に付着したプリオン22L株を検出する高感度の定量的in vivoアッセイを使用した。この自動処理法は、従来のアルカリ洗浄に比べて大きな利点を有していた。また、この新規処理法は、134℃ 2時間の高圧蒸気滅菌による効果とも同等であり、高度に汚染した表面からもプリオンの感染性は検出不能であった。これは、表面付着プリオンの感染性低下が7 log単位を超えたことを示している。この処理法は精巧な手術器具にも適用できるため、中央滅菌材料部で集約的な医療器具再処理工程に組み入れることが可能である。このシステムは、プリオンの医原性伝播の防止に大きく寄与する可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
わが国では日本手術医学会から2008年にプリオン対策としての医療器具再処理ガイドラインが発表されており、その中では(1)アルカリ洗剤ウォッシャー・ディスインフェクター洗浄(90~93℃)+真空脱気式高圧蒸気滅菌(134℃ 8~10分間)、(2)洗浄+真空脱気式高圧蒸気滅菌(134℃ 18分間)、(3)アルカリ洗剤ウォッシャー・ディスインフェクター洗浄(90~93℃)+過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌2サイクル(NXは1サイクル)、などとする現実的な対応が推奨されている。プリオン対策には様々な困難を伴うが、潜在性プリオン病からの交差感染による因果関係が明確な事例は少なくとも過去30年間にわたり報告されておらず、過剰なコストをかけた対策は考えものである。
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