英国における医原性クロイツフェルト・ヤコブ病の現在のリスク:市販洗浄剤の有効性と脳神経外科用器具の再利用可能性

2010.08.31

Current risk of iatrogenic Creutzfeld-Jakob disease in the UK: efficacy of available cleaning chemistries and reusability of neurosurgical instruments


R. Herve*, T.J. Secker, C.W. Keevil
*University of Southampton, UK
Journal of Hospital Infection (2010) 75, 309-313
再利用可能な外科用器具の初期洗浄は、その後の滅菌過程の有効性を確保するために非常に重要である。伝達性海綿状脳症は治療不能かつ致死的な神経変性疾患であり、その伝播は自己会合型のプロテアーゼ抵抗性プリオン(PrPSc)の吸収または摂取のみにより生じる。このプリオンはほとんどの標準的洗浄剤や熱による汚染除去法に強い抵抗性を示す。したがって、再利用可能な外科用器具に、滅菌サービス部門の標準的な再処理後に感染性物質が残存していれば、これらの器具を介する医原性伝播のリスクがある。匿名の滅菌サービス部門との共同で、外科用器具汚染除去の現状を評価することを目的とした。プリオンに感染した脳ホモジネートを外科用ステンレススチール表面に付着させ、滅菌サービス部門で現在使用されている酵素洗浄剤で汚染除去後、プリオンアミロイドやその他の蛋白質の残存量を落射型微分干渉/エピ蛍光(episcopic differential interference contrast/epifluorescence;EDIC/EF)顕微鏡を用いて測定した。「清浄かつ即時使用可能」とされた再利用可能な器具の染色も行い、実験室で得た所見と比較した。いずれの洗浄剤も推奨条件下での有効性は部分的なものであった。より重要なのは、PrPScがこれらの表面の残存汚染の主要成分であったことである。脳神経外科用器具にもアミロイドや通常の蛋白質による汚染が残存していた。今回の研究は、現在市販されている洗浄剤と現行の汚染除去プロトコールでは、医原性クロイツフェルト・ヤコブ病の脅威を完全には抑止できないことを示すものである。上述の所見を、リスク評価の目的や、器具の取り扱いと汚染除去実践の再評価に取り入れるべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
通常の洗浄や滅菌法ではプリオンが完全には除去できないことに関しては、すでに様々な報告がなされている。この論文は、染色法によって汚染の残存を可視化しているところがユニークである。一般に、プリオンの消毒滅菌に対しては、厳密性を求めると非現実的な側面が大きくなる。地域の有病率や部位ごとの危険度を評価する、リスクアセスメントが最も重要であろう。

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